『大法輪』(大法輪閣)、2011年8月号(78巻8号)。44 - 45頁。

地球の自転が揺らぐとき

 地球が平らだと思っている人は、まさかいないだろう。しかし地球が空中に浮いている球であることを実感しているのは私たち地球物理学者くらいなのではないだろうか。

 2011年3月に東北地方太平洋沖地震(東日本大震災)が起きて、地球の自転速度が百万分の1.6秒だけ早くなった。

 これは巨大で重いプレート(地球の表面をおおっている厚さ百キロメートルほどの岩の板)が地震のときに突然動き、それゆえ地球の質量の分布が変化したためだ。同時に、地球の回転軸も約15センチメートルずれた。

 しかし、これは初めてのことではない。いままでに起きた大地震でも地球の自転速度や回転軸が変化したことがある。たとえばスマトラ沖地震(2004年)ではこの4倍も自転速度が早くなった。

 そもそも地球はきまった自転軸のまわりを回っているのではない。地震が起きなくても地球の自転の軸は毎日少しずつ動いていき、極点のまわりを円を描きながらゆっくり動き、一年かかって元へ戻っているのである。

 自転の軸が動くのにはいろいろの理由がある。地球は宇宙に浮いている球だから、地球の上の重さのバランスが変われば地球が回る軸や自転の速度が変わる。

 地球のバランスを乱す最大の理由は、じつは地球の空気である。冬の間、世界最大の大陸であるユーラシア大陸には雪が降り、大陸は冷やされて、大陸の上の空気は冷たくなる。空気は冷やされれば重くなる。こうして地球の重さの分布が変わるのだ。

 夏になれば、このアンバランスは消える。こうして地球の自転の軸は南極点や北極点のまわりを一年がかりでゆっくり動き回ることになる。その動きは直径10メートルほどだ。

 精密に見るとこのように地球の自転の軸はいつも動きまわり、自転の速さも微妙にゆらいでいる。しかし私たち地球物理学者といえども、身体で感じているわけではない。精密な機械で測っているから初めて分かることなのである。


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