吉村証子記念日本科学読物賞

『東京新聞』 1983年4月26日の記事
第3回日本科学読物賞決まる
『地震をさぐる』と『科学のアルバム』編集

 吉村証子記念会(増村王子理事長)の第三回日本科学読物賞授賞にかんする選考委員会はこのほど東京・神田の学士会館で開かれ『地震をさぐる』(島村英紀著=国土社)と”科学のアルバム”シリーズ(あかね書房編集部)の編集活動に対して賞を贈ることを決めた。

 この賞は、科学読みものの研究・普及・創造に生涯をかけた故吉村証子氏(津田塾大講師、科学読物研究会を創設)の業績を記念し、科学読みものの一層の向上をねがって、1981年に制定されたもの。今回の授賞対象を決めるにさいしては、科学読みものに関心をもつ300人近い研究者・教師・図書館員・文庫関係者にアンケートを行い、予選委員会(計4回)で精査したものを選考委員会(八杉竜一委員長ほか六氏)にかけるという、入念な検討が加えられた。

 なお、授賞式と祝賀会は6月12日午後5時から東京都教育会館で行われ、賞状と佐藤忠良氏制作のブロンズ像「花」が贈られる。授賞理由はおよそ次のとおり。

『地震をさぐる』=地震は、どこでなぜ起きるのか、その前兆はわかるのか、などを地震観測の第一線にある科学者が子供向けに書いたもの。今までの学問的成果に基づいて、系統的にわかりやすく書かれているし、地震の科学の最前線の雰囲気が十分伝わってくる。各所に挿入された地図、写真、イラスト等も読者の理解を助けて効果的。

★”科学のアルバム”の編集=このシリーズでは1970年6月に第一巻が出て以来、これまでに77巻(ほかに別巻3巻)が刊行されている。スタート当時は美しいカラー写真による科学の本がきわめて少なく、その後さかんに出版されるようになった類書の草分け的な存在。肉眼では見えない世界でも鮮やかに写し出し、図解も入っているのでわかりやすく、「科学の本は硬くてわかりにくい」という従来のイメージを変え、科学の本全体の普及にも大きな役割を果たしてきた。

授賞式でいただいた彫刻家・佐藤忠良氏制作のブロンズの少女立像「花」。ほんものの美術品を賞としていただけるのは出版関係の賞としては珍しいことである。それもあって、このブロンズ像は、私にとってかけがえのないものである。

作品の高さは台座も入れて約33センチメートル、重さは約1.9キログラムあり、ずっしりと重い。

佐藤忠良氏は、この像を(第一回の授賞式のために)作ったときに69歳だった。かなりのご高齢にもかかわらず、子供が好きなのであろう、第3回の私のときに限らず、子供のための本の賞である科学読物賞授賞式には毎回、来てくださっていた。

【追記】佐藤忠良氏は2011年3月30日午前8時16分、老衰のため亡くなった。98歳だった。ご冥福をお祈りいたします。授賞式で、佐藤さんとお話ししたいろいろの思い出も忘れません。

その胸像部分

その胸像正面

その台座と銘。CHURYOの字が刻まれている。また、第3回吉村証子記念日本科学読物賞と刻まれている。


なお、この賞は、母胎になっていた科学読物研究会の財政難から、1995年に廃止になってしまった。
日本科学読物賞とは

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