『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2001年01月05日夕刊〔No.278〕

地球物理学者の年始

 年の初めに、今年一年を思う人も多かろう。一年を思うこととは、これからの365日を思うことだろう。

 しかし私たち地球物理学者は別の感想を持つ。365というのはたまたまの数だからである。

 地球の歴史46億年を一日にたとえれば、今からわずか2時間前には、一年は400日もあった。つまり、今よりも地球の自転が速くて、一日は22時間しかなかったのである。

 そもそも地球が出来たときには、地球の自転の速さははるかに速かった。一年は1800日もあったのだ。

 つまり地球が太陽の周りを回る一年の長さは一定なのに、地球の自転だけは遅くなる一方なのである。

 これは地球の自転にいつもブレーキをかけ続けている強大な力があるからだ。多くは潮の満ち干による海水と海底の摩擦だ。

  また、地球の岩全体が太陽や月の引力に引かれて一日15センチも上下する地球潮汐(せき)といわれる現象にもエネルギーをとられる。地球の中心には巨大な溶けた鉄の球があるのだが、その液体とまわりの岩の摩擦もある。

 もし、一日が12時間であったなら、12時間目にまた会社や学校へ行かなければならない。これでは、せわしなくてかなわない。

 一方、一日が72時間だったら、仕事や勉強で疲れ果て、他方、夜は退屈してしまうにちがいない。  私たち人類は、ちょうど一日が24時間という時代に生まれたことに大いに感謝すべきなのだろう。

 人類が、地球の自転がついに止まってしまったあとに生まれていれば、地球上の一日は一年になる。年に一度しか太陽は昇らず、一度しか沈まなくなるのである。

 もしそうだったら、私たちの社会や人生はどんなものになっていただろう。

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