『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2003年5月1日夕刊〔No.302〕

地球物理学者の飲み水

 他の大学と同じように、北海道大学でも学生生活実態調査をやっている。その結果は教育や環境の改善に生かされるはずのものだ。

 世は情報公開の時代。また独立法人化が目前に迫ってきて、「客」である学生に選んでもらわなければならない立場の大学としては、以前よりも腰が低くなっている。調査票に記入してもらった要望に大学側が答えた厚い問答集が全部の教官に配られた。

 苦労がにじみ出ている回答が多い。「北大の冷房設備は実験装置の保全のためで基本的に「人」のためのものではありません」。学生は冷房を要求したのだろう。「暖房の改善については同感ですが、建物全体の老朽化で、すきま風等があって室温の低下を招いています。限られた予算内で順次改善を図っていますので、ご理解をお願いします」。順番が来るまで震えているしかない。

 「時代の流れに対応したパソコンをという希望は理解できますが、あなた方の学修・研究活動に直接影響する研究用や事務用のパソコンでさえ三年から五年遅れが普通という予算事情にあることも理解しておいてください」。「大学院生が学会に出る旅費の件ですが、教官も自己負担が多いのを知っていますか?これが日本の基礎研究の実体なのです。国民的な理解が得られるよう、学生諸君からのアピールにも期待しています」。貧しい研究環境に浸っていると、学生運動を扇動したくもなる。

 「淡水産の動物を研究材料にしているが、北大の水道の水質が悪く成長が非常に悪い」。この学生の観察は怖い。さて、毎日北大の水を飲んでいる私たちはどうなるのだろう。 

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