『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2003年11月18日夕刊〔No.308〕

地球物理学者の推理


 昔なら明智小五郎、今ならさしずめ名探偵コナンなら、どうするだろう。

 大事件が13回起きた。そのうち5回は12月に、あとのすべての事件も、いろいろな年の8月から2月までに起きた。

 なぜ3月から7月までには一回も起きなかったのか、12月には何かがあるのか、まず調べようとするに違いない。

 事件とは、日本の南岸のすぐ沖に起きるマグニチュード8クラスの巨大地震。東南海地震(1944年)や南海地震(1946年)など、フィリピン海プレートが日本で起こした過去の大地震である。

 残念ながら、現代の地球物理学者は、名探偵の能力は持っていないことを露呈した。なぜ、こんなことが起きたのか、説明が付かないのである。

 気温や水温の違いのせい、とは考えられない。地震が起きる深海底では、水温は気温の影響も受けず、一年中一定なのである。

 気圧はどうだろう。気圧は日々の変動はあるが、平均すると、冬の方が10ヘクトパスカルほど、夏よりも高い。

 しかし、これだけの違いでは、大地震が臨界状態にあったとしても「引き金を引く」にしては、あまりにも小さすぎる力しか出せないのである。

 もし、この13個の地震が、なんの理由もなく偶然に起きているのだとしたら、このように揃って起きる確率は、わずか2%しかない。

 さて、偶然なのか、それとも、まだ解明できていない理由があるのか、地球物理学者は推理能力の乏しさを嘆いているのである。

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