『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2004年1月26日夕刊〔No.310〕

地球物理学者の意気消沈


 関係している生徒や先生以外にはあまり知られていないことだが、高校の理科は、選択科目、つまり物理・化学・生物・地学のうちから生徒が選ぶ仕組みだ。

 それぞれの教科書がどのくらい注文があったかという統計がある。

 それによれば、昨年の全国の統計では、生物IBが49万、物理IBが29万、化学IBが25万、地学IBが9万になっている。つまり生物が圧倒的に多くて、物理と化学がそれに続き、はるかに離れたビリに地学がいる、ということになっている。地学は、トップである生物の5分の1しか、選んでもらっていない。しかも、次第に下がっていっているのだ。

 生徒としては、いろいろ考えるに違いない。

 まず、その科目を学ぶのが難しいか易しいのかを考えるだろう。物理や数学は苦手という文科系の生徒は多いかもしれない。しかし、生徒の人たちに言いたいことは「食わず嫌いはよくない」ということだ。教え方さえよければ、物理はとても論理的だし、面白い学問なのである。

 また、大学受験に役立つのかどうかも、進学を考えている生徒には重大な選択だろう。岩や化石の名前など、たくさんの無味乾燥な知識を詰め込まなければ受験に成功しそうもない地学は、嫌われる傾向にある。

 人類が暮らす土台としての地球、人類が痛めつけてきていて、誰でもが将来を考えてほしい地球について、一度も習わないまま、大学に行ったり、社会に出てしまう生徒が増えていることに、私たち地球物理学者は意気消沈しているのである。

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