『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2004年3月4日夕刊〔No.311〕

地球物理学者の学生争奪(紙面での題は「学生の奪い合い」)


 私たちの学科では、四年生になるときに、研究室ごとに配属される。学生から見れば研究室を選ぶのだが、私たちから見れば「選んでもらう」ことになる。

 もし大学院に行くのならば、進学時にもう一度選び直す機会がないわけではないが、やはり四年生としてすごした研究室に進学することも多い。つまり、いい学生や大学院生に来てもらうために、先生の間で、学生の争奪戦が水面下で繰り広げられることになる。

 私たちの学科では、教授一人あたり学生何名、助教授一人あたり何名という枠が今年は強制されることになった。昨年までも一応の枠があったのだが、その枠以上の学生が志望したときには、受け入れる先生の裁量で枠を超えてもいいことになっていた。教育熱心な先生がたくさん受け入れる。常識的な解決であった。

 しかし、昨年、どの学生にも来てもらえなかった某先生が横槍を入れた。今年は「枠」を厳密に守ることになったのである。

 そして、懸念通り、枠を超えた学生が出た。まとめ役の学生は苦慮したらしい。ジャンケンで決めようとしたら、ある先生に、不謹慎だと怒られたという。

 かくて「話し合い」をして、溢れた学生は第二志望以下にまわることになった。四年生の志望先の振り分けにも、ドラマがあったのである。

 さて、その某先生はどうなっただろう。先生の元には、今年も学生が来なかったのである。

 北大も四月から国立大学ではなくなる。どの先生も、安穏とはしていられない時代になるのだろう。

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