『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、2004年7月28日夕刊〔No.316〕

地球物理学者の茶髪

 学生食堂のテーブルの上に、アルバイト募集というハガキくらいの小さなビラがあった。医学系の学会のアルバイトである。医師に資料を手渡したり、学会の進行係を務める。

 時給は700円だが、初日には2時間の作業説明だけで2000円が貰えるらしい。

 女性、スーツ着用とある。さて、1997年から一段と厳しくなった男女雇用機会均等法では、女性だけと明示するのは、いけないのではなかったのかしら。小さなビラを机の上に置くのなら許されるのであろうか。

 そこに「頭髪はフォーマルな場にふさわしいくらいの色。ひどい茶髪は不可」とある。

 小さなビラのわりには、ずいぶん詳しい記述だ。しかし、基準そのものは、なんとも曖昧である。医学部の先生たちは、もしかしたら、たいへんな議論のすえに、この文案を作ったのかもしれない。

 近頃は、北大生でも、髪を染めているのはごく普通になった。ちょっと見には分からなくても、長い観測に連れていったりすると、髪が二色になるので、それと知れることもある。

 いや、学生には限らない。うちの独身の助手は、秘書に気に入られるように、髪を染めている。

 なにをやっているのだろう、男は中身だ。

 あれ。この言い方もまずいかな。いまの大学では、男女差別やセクハラはもっとも注意すべき話題なのだ。

 言いたいことを素直に言えないのは、なんとももどかしい。

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