『花時計』(読売新聞・道内社会面)、1993年3月3日夕刊〔No.15〕に加筆(*)

北大生は二度と北大を受からない

 世は受験シーズン。試験と、その発表を待つまでのドキドキした気分に苛まれている受験生も多いだろう。

 晴れて北海道大学に入学した学生に、もう一度、受験問題を解かせて見たらどうなるだろう、という実験が行われた。解かせたのは英語の全国共通入試。一年生から三年生までに、今年の問題を与えてみた。10人ほどの学生である。

 結果は驚くべきものであった。受験時よりも点数がいい者はゼロだったのである。

 いちばん出来た学生でも、受験時よりも8点下がった。もっともこれは英語国に留学していたという例外的な学生だ。

 下はきりがない。200点満点で30点から、80点も下がってしまった学生もいる。もう一度北大を受けたら、もう通らないに違いない。

 じつはこの「実験」は北大の学生が作っているスポーツ新聞が行ったものだ。いや、町と同じく、北大にもスポーツ新聞があるのだ。162点から84点へと、もっとも実力が下がった学生は塾の先生をしている、と記事にはある。彼が教壇に立っていることは日本の教育問題を考えさせる、とコメントにある。

 北大に限らず、入学したら勉強よりは遊ぶことに熱心な学生は多い。英語以外の能力は上がっている、と思いたいが、保証の限りではない。

 入るのに難しく、出るのに易しいのが日本の大学だ、といわれて久しい。責を学生のせいにするのは安易だ。さて、大学の教育とはなんだろうか、と私たち大学の教師は考えてしまう。

 豚児たちよ、書を捨てて町に出ないでおくれ、と言えるだけの自信を、現代の大学の教師は、あいにくと持ち合わせていないのである。もちろん大学の英語の先生の責任を問うているのではない。

:*)紙面掲載時に長すぎて削った分を復活しました。 なお、紙面での題は『豚児たちの学力』でした。

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