『花時計』(読売新聞・道内社会面)、1993年5月6日夕刊〔No.17〕

名簿ビジネスの犠牲者

 春休みで帰郷していたり、遊んでいて帰ってきた学生のアパートの玄関には、背よりも高いダイレクトメールの山が築かれていることがある。

 いささか不景気の波をかぶっているとはいえ、大学の新卒者を採用しようという企業は多い。その熱意の現われが、学生への就職案内のダイレクトメールなのである。色鮮やか。学生が読みそうな雑誌や本のスタイル。中身には十分に金をかけて、工夫を凝らしてある。

 大学は学生の名簿を学外に出すことはない。しかし蛇の道はヘビ。新四年生の名簿をどこで手に入れるのかは知らないが、各大学の名簿を売買する名簿ビジネスが活躍しているのであろう。

 名簿ビジネスといえば、学生を困らせているダイレクトメールがある。

 新四年生をリストアップ出来るくらいだから、成人を迎える学生のリストなど、わけはないに違いない。

 そこで、成人の日に間に合うように、振袖の売り込みを図る各社のダイレクトメールが学生の許に舞い込むことになる。もちろん女子学生が相手だ。しかし、時として、男子学生にも振袖のパンフレットが送りつけられることがあるのだ。

 大学の名簿は、高校までの名簿と違って、男女別にはなっていない。五十音順に並べてあるのが普通である。このため、名前だけでは男か女か分からない名前の学生には、山ほどの振袖の案内が届くという寸法なのである。

 これから親になろうという方々、20年先に息子が当惑しないような名前をお考えになったほうがいいかも知れません。

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