『花時計』(読売新聞・道内社会面)、 1996年7月16日夕刊 〔No.52〕

動物的予知

 動物が天変地異を予知する、と言われることがある。大地震の前に深海魚が捕れたり、ふだん姿を現さない動物が現れたりすることがあるからである。また植物が地震を予知すると主張している先生もいる。ネムの木に刺した電極の電圧が微妙に変わるのだそうである。

 ケダモノや、まして植物が天変地異を予知ができるのなら、不肖、ケダモノの一種である人間が予知できないわけがない。

 たしかにできるのである。ただし予知した本人が、予知したとは決して思っていないのが人間の予知の特徴であろうか。

 たとえば火山学者であるI先生は、数十年に一度噴火する地元の火山が噴火した2回とも、外国出張中であった。もちろん先生はあわてて帰国して観測の指揮をとったのだが、噴火に立ち会えなかったことは大いに残念だったにちがいない。

 別の例もある。気象庁で最大の地震観測所が長野県松代町にあるが、1960年代に世界標準地震計という最新鋭の地震計を設置したとたんに、日本史上でも最大規模の群発地震に見舞われた。それから約2年にわたって、多いときには1日に700回もの有感地震が、この町を襲ったのであった。

 北海道大学理学部が持つ有珠火山観測所もそうだ。何年もの設置の準備の結果、観測所の設置に予算が付いたとたんの1977年に、有珠火山の噴火が始まったのであった。

 旅行計画書を書いたり、予算要求書を作ったりする「行為」が地震や噴火を起こすはずがないのだが、もしかしたら、地球には眼がついていて、人間が何をしているのかを見ているのであろうか。

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