講談社『in★pocket』、 2008年11月号

続発する『政府の想定外』の地震

”もうひとつのあとがき”
(著者島村英紀による『「地震予知」はウソだらけ』の紹介ページ)

  阪神淡路大震災以後、政府は日本中に何千とある活断層から約100を選んで地震危険度を数字で発表している。しかしそれをあざ笑うように、ノーマークのところばかりに地震が起きている。2000年の鳥取県西部地震、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2007年の能登半島地震、同年の新潟県中越沖地震、2008年の岩手・宮城内陸地震である。

 この間、学者はなにをしていたのだろう。じつは、日本での地震学を支えている研究費のほとんどは国費で、一部は電力会社からも出ている。このため地震学者は、そもそも「御用学者」になる宿命にある。たとえば研究費のほかに、地方の学者にとっては会議という名目で上京する旅費をもらえたり、調査報告書を頼まれて「原稿料」をもらえる数少ない機会は得難いものだ。

 地震学会も同じだ。世界最初の地震立法である大震法(大規模地震対策特別措置法、1978年施行)や政策に対して、学者としての見識を発揮したり社会的責任を果たしてものを言ったことは一度もなかった。学会は学者の仲良しクラブにすぎないのだ。

 じつは、この文庫本の底本になった『公認「地震予知」を疑う』が出たときに、学会は貝のように口を閉じた。

 しかし学会員が私の本を読んでいないというわけでは決してなかった。私がある大学で講演をしたときのことだ。講演後の懇親会が終わりかけたとき、若い研究者が教授たちの目をはばかるようにこの本を持ってきて「サインをしてくださいますか」と言ってきたのだ。また、ある官庁の研究者からは「定年になったら、私にも言いたいことがいっぱいあります。支援しますからね」と言われた。

 原子力発電所は「内陸ではマグニチュード6・5を超える地震は起きない」前提で作られている。しかし近年、それよりずっと大きな地震が起きている。また原発の設計指針で「将来起こりうる最強の地震」とか「およそ現実的ではないと考えられる地震」としていた揺れを何倍も超えるデータも記録された。

 続発しているこれら「政府の想定外」の地震は、自然からの警告にちがいない。この警告を読みとって、この次の地震が致命的な災害をもたらさないために備えておくことができるかどうか、人類の知恵が試されているのだ。

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