『電気新聞』書評 2001年5月30日(水曜)号 編集企画のページ「今週の一冊」
評者:柴田鉄治(元朝日新聞科学部長・社会部長・論説委員、ICU教授)
『地震と火山の島国--極北アイスランドで考えたこと』島村英紀著

不思議と、地球と日本が見えてくる

 中高校生向きの本をこの欄に取り上げるのは、いささか場違いなのかもしれない。しかし、名前はジュニアブックでも、レベルはけっして低くはなく、対象も内容も十分おとなの鑑賞にたえる書物である。

 むしろ中学生にもわかるようにと、かみ砕いて書かれた文章が内容とぴったりマッチして、心地よいリズムを醸し出している。すらすらと読み進むうちに自然と地球のことがわかってきたり、この小さな国を鏡にして日本という国がどんな国なのか見えてきたりするのだから不思議である。

 アイスランドは、大西洋の北部にあって海底火山の頂が海面に顔を出した北海道くらいの島国だが、人口はわずか二十七万人しかいない。国土の大半を溶岩と氷河に覆われ、産業らしい産業は、漁業くらいしかない国なのに、地熱発電と水力発電によって生み出される豊富で安い電力をうまく活用して、豊かな社会を築き上げている。

 地球物理学者の著者が、この国を訪れたのは八二年以来、十二回に及ぶというが、なぜそんなに何回も訪れたのか、その理由を説明する形で、この国がいかに地球物理学上の特異な場所なのかを巧みに説明していく。地球の構造とそのダイナミックな仕組みを解き明かしたこの部分は、本書の中ても圧巻だ。

 著者は地球を卵にたとえる。黄身が核、白身がマントル、殻がプレートだ。プレートは厚さ三十キロメートルから百五十キロメートルくらいの岩石の板で、陸地や海底を乗せてゆっくりと動いている。その速さは一年で数センチメートル、爪の伸びるくらいのスピードだといわれる。

 日本はこのプレート同士がぶつかり合い、プレートが沈み込んでいるところなのだ。すなわち、日本列島を乗せた北米プレートとユーラシアプレートに、それぞれ太平洋プレートとフィリピン海プレートがぶつかって下に沈み込んでいる。プレートの沈み込むところでは「海溝」が生まれ、地震が多発する。

  それに対してプレートが生まれるところでは海底が盛り上がり「海嶺」となる。アイスランドはこの海嶺の一部なのだ。つまり大西洋で生まれたプレートが東西に分かれて地球をぐるりと回り、ぶつかったところが日本列島の真ん中で、日本海中部地震や北海道南西沖地震はそのプレートの押し合いで起こったものだったのである。

 なんと壮大な地球の営みだろう。いうなれば、著者は日本の地震の「ふるさと」をさぐりに北大西洋に通っていたわけだ。

 本書の後半は一転、「ミクロの視点」に戻って、この国の自然や人々の暮らしなどを詳細に描き出す。著者の観察眼はなかなか鋭く、人々が厳しい自然と闘いながら、どうやって「大きな家に住み医療も教育もタダ」という豊かな社会を築き上げていったのか、その工夫や努力の跡を見事に浮かぴ上がらせている。

 日本との比較論も面白く、一種の文明批評になっている。著者の多才さが随所にあふれた本である。

(岩波ジュニア新書、780円)

あっぷメイツニュース book 注目の一冊 (2001年7月25日(水)号)
地震研究の第一人者が描く、 世界最北の小国「アイスランド」の自然と文化、そして人々−。
『地震と火山の島国--極北アイスランドで考えたこと』  ●島村英紀著(岩波ジュニア新書)

 北海道大学の教授で、地震研究の第一人者、島村さんの「アイスランド報告」である。

 本書はアイスランドの自然の解説にとどまらない。今の日本のあり方、つまり、社会・経済・文化・科学などのすべての分野で私たちがあたり前と思ってやっている方法が、本当に正しいのかどうか---島村さんは、「ゆったりして人間味にあふれた生活」を楽しめるような国を作るにはどうしらいいのだうう、と問いかけている。

 目立たないが、しつかりとした考えに基づいて国づくりを行っているアイスランドのような国に、案外、解決のヒントがかくされているのでほないか--島村さんは、そう考えているようだ。

 私たちには重たい言葉が添えられている。「この国(アイスランド)がうまくいつているのは(中略)この国の人ひとりひとりが国のためにいっしょうけんめい努力しているからである」。

 今の日本は、はたして・・・。

(あっぷメイツニュースは『じゅにあセレクション』のネクスト社の渡辺徹氏が編集しているあっぷメイツ事務局が発行する会員機関誌)

「著者に会いたい」
『地震と火山の島国』(島村英紀さん 岩波ジュニア新書・780円)
2001年4月22日・朝日新聞・書評面

 表題の「島国」は、世界で一番北にある小国アイスランドのこと。本書はこの国のガイドで、地球物理学の入門書でもある。「北海道大学・地震火山研究観測センター長」の肩書を持つ著者は、海底や地上に地震計を設置して観測データを取るため、1982年から12回も訪れている。氷河や火山の被害には悩まされるアイスランドだが、逆に、厳しい自然を利用して水道水はタダ、温泉も格安で全家庭に配給される。医療費も教育費も無料、平均寿命も長い。本書を読んで移住を計画中の人もいるらしい。  この国は国土全体がプレートが誕生するところ、つまり隆起した海底火山の頂上にある。このためユーラシアプレートと北米プレートに、引き裂かれ続けている。そうした地球の活動を説明するプレート・テクトニクスや、新しく出てきたプリューム・テクトニクスの理論を、分かりやすく説明した本だ。「自分の子供に話すように書きました」。理科でつまずいた大人にもありがたい。

 北欧の歴史にも触れる。東西冷戦のころ、原潜銀座の北極海での観測は至難のことだった。「我々には国境も人種も関係ないのだけど」

 著書は多く、日本科学読物賞なども受賞。その面白さからサイエンス・エンターテインメントと呼ぶ人もいる。「科学者には説明する義務があると思う」。地震予知についても「わからないことや難しいことも含めて見通しを説明し、研究の必要性をわかってもらう努力が必要」という。

 観測は気象条件に左右される。お天気待ちのお供は本。お気に入りは別役実さん、出久根達郎さん、最近は阿川佐和子さんだそうだ。

(吉村千彰記者)

インターネット書評界で有名な琉球大学・道田泰司先生(琉球大学教育学部)のインターネット書評(短評)
4月の読書生活 2001/04/30(月)
『地震と火山の島国−極北アイスランドで考えたこと』
(島村英紀 2001 岩波ジュニア新書 ISBN: 4005003699 \780)

 著者は,『地震は妖怪 騙された学者たち』を書いた人だ。アイスランドでは,2つのプレートが生まれる場所である。地球物理学者である著者が研究のために何度も訪れているうちに見えてきた,この国の自然,社会,人の暮らしが書かれている。

 それによると,アイスランドは,次のような国だった。人口27万人の国,雨が下から降るほど風が強い国,土も森も林もほとんどない国,外来語のない国,軍隊をもたない国,漁業と酪農しか産業がない国。それでも豊かな文化と生活のある国。

 本書は岩波ジュニア新書らしく,エピローグで,このようなアイスランドのあり方をもとに,日本の若者に,日本のあり方を考えさせるような終わり方になっている。このように,ただのお国紹介本になっていないところ,なかなかうまい

 あと,全般的には淡々とこの国について描写されるのだが,最終章では,1996年に起きた大きな噴火と洪水が,臨場感あふれる書き方で描かれている。この盛り上げ方もナカナカ。

(太字は道田先生が付けたものです)



読者の反響

 

『地震と火山の島国--極北アイスランドで考えたこと』を読み終えました。心に残る大きな感銘とともに。

いま、まだ見たことのない「この国」と、長年親しんできたような錯覚にとらわれています。失礼な申し様ですが、島村さんの筆力と語り口に、改めて目を開かされた思いです。

いや、単なる作力ではありません。行間からほとばしる熱いメッセージが、読むものを圧倒します。

とりわけ、次のふたつを島村語録にとどめたいと思います。「人間の競争にはきりがなくても、自然界にはきりがある」(144頁)。そして「ヨーロッパの小さな国々の人々は、大国がその力を使って他の国に指図したり、他の国を利用したりすることをとてもきらっている。そのかわり、それぞれの国々はそれぞれのしっかりした考えとやり方を持っている」(192頁)。


この本は、次代を担う若者たちへの、またとない贈り物です。それだけではありません。私のような老人も、まだなすべきことがあるのではないか。と訴えかけてきます。心から感謝申し上げます。

島村さんのますますのご活躍をお祈り申し上げます。


ある八戸市民のブログから
主題 地震と火山の島国 
大分類 6  小分類 国際 
副題 極北アイスランドで考えたこと  著者 島村英紀 
発行所 岩波書店  ISBN 4-00-500369-9 
読了日 2005年12月31日  評価 4:好印象 
感想 あるとき八戸市にアイスランドの駐日大使がやってきた。そのときに是非わが国へどうぞと宣伝のためにおいていった本だそうだ。政策推進室のメンバーからいただいた。お国の様子を余すことなく網羅しており、すぐにでも行きたくなる内容である。その後市長はじめ市の商工会のお偉方が訪問した。なんといってもエネルギー先進国である。 

16歳の読者のブログから
 アイスランドは大西洋中央海嶺の上にあり、火山活動が非常に活発な場所だそうです。 その厳しい自然の中でのアイスランドの人々の暮らしとはいかなるものか、この本には書かれています。
  この本を読んで私はアイスランドがとてもいいところだと思いましたし、住んでみたいとも思いました(-^〇^-)
  ぜひ読んでみてください!! 寒くて寂しい国だという皆さんのアイスランドのイメージが一変すると思います。

私の3冊の本を同時に読んでくださったブログから
 『地震と火山の島国』は、産経児童出版文化賞受賞とあるが、大人の読書人である私をも魅了する見識の高さにあふれた内容である。そして『地震予知は嘘だらけ』(2004)を読んでみて、ああ、これで彼は冤罪に巻き込まれたのか、と納得した次第である。

読んでくださったブログから「書店で この本の著者の名前を見て、
即、購入しました。以前『火山入門』NHK出版新書 を読んだことがあったからです」2016年6月7日
 この本を読んでいると、アイスランドという国が大好きになる。そこに住む人々が愛おしくなる。そして日本と日本人に思いを馳せてしまう。
 地球物理学の入門書であり、地球物理学者の人生を描写したものであり、人間と自然のかかわりを考えさせるものであり、日本の進むべき道をやんわりと示すものでした。
 とってもおもしろく、勉強になり、心を揺さぶられる一冊でした。

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