今月の写真
国民のたくましさ。日本にはなくなってしまったようですが・・。

メキシコで学会があり、招待講演を頼まれたので9日間ほど行ってきた。メキシコは8年ぶり、5回目だが、いままではすべて南極やアルゼンチンや、プエルトリコ海溝での深海潜水艇乗船の途上での0〜2日の短期滞在だった。

首都メキシコシティで、いちばん変わったのは電気街である現地の「秋葉原」だった。その国の庶民の暮らしや経済状況は、修理業に現れる。たとえば、昔は自動車のドアミラーを修理するのに、日本ではドアミラーごと(つまりアッセンブリーで)交換するのが普通だったが、この国では、ドアミラーのミラー部分だけ(つまり壊れたガラス部分だけ)を交換するのが当たり前であった。また、一昔前は時計の修理業が多かったが、いまは、写真のように、携帯電話やスマホの零細修理業が花盛りだった。

彼が左手に持っているメスのような鋭利な道具は、極小ネジまわし、プラスチックケースのこじ開け、液晶の分解など、なんでもできる特殊工具。こうして、ハイテクの塊であるスマホや携帯も、この国では、逞しく分解され、改造されている。歯ブラシは部品の清掃用にちがいない。

机の上に無造作に転がっている長短さまざまの小ネジを元通りに組み立て直すのは、ほとんど神業である。しかし、彼は、目の前に客を待たせたまま、客の望み通りの改造を、あっという間に終えてしまう。工賃は、もちろん、交渉次第である。


この国では車検制度が近年までなかった。いまでも完全ではない。

しかし、主に車による大気汚染が大きな問題になっている標高2240mの高原の盆地、メキシコシティでは、大気汚染への対策がそれなりに進んでいる。ちなみに、非営利の環境団体「ブラックスミス研究所」の2007年環境汚染地域「The Dirty Thirty」の中で、メキシコシティは世界最悪の大気汚染都市とされた。

たとえば、新車から10年を経過した車は、週に1日、道を走ってはならず、20年を経過した車は週に2日の走行が禁止されている。排気ガス浄化装置のない古い車の走行を、こうして規制しようというのである。

しかし、写真のような小型で「自作」の車はお目こぼしのようだ。これはオートバイを改造した3人乗りのタクシー。産油国だけに、ガソリンエンジンの「手作り」輪タクである。

天井は、客だけはスコールにあてさせまいという親切心(商売っ気)なのであろう。もちろんタクシーメーターはついていない。値段は客との交渉で決まる。運転手はこれで日銭を稼ぎ、家族を養っているのである。

ちょっとした技術を生かして、稼げるところで稼ぐ。これがこの国の国民のたくましさなのである。他方、政治に不満ならば、広い道を埋めるデモも起きる。それにくらべて、日本の国民は、戦後の猥雑な混乱期とちがって、なんとひよわになってしまったのであろうか。


このほかの「メキシコの”個人路線バス”と庶民タクシー」
このほかのメキシコの「社会学者も頭をひねった車」
このほかのメキシコの「走るかぎりは使う車」
このほかのメキシコの「威厳のない警察車両」
このほかのメキシコの「マフィアとの国内戦争を闘っている国の車」
このほかのメキシコの「バンパーだけが傷だらけの配達車」
このほかのメキシコの
大気汚染が世界最悪の都市・メキシコシティも「クリーン」や「エコ」で頑張っています


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