今月の写真
稲荷のキツネ・動物信仰


東京都新宿区早稲田に「水稲荷」があり、この跳ねたキツネがある。雌雄で組になっているが写真はその片方、メスのほうだ。先に走っているオス(左下の写真)が後ろのメスを思いやって振り返っている姿で一組になっている。

稲荷神社は全国にあり、なかでも東日本に多い。しかし、ほとんどのキツネは狛犬のように座っているが、ごくわずかだけ、このように躍動的に走っている姿のものがある。

この水稲荷も1000年以上の歴史があるそうで、身体の悪いところがある人が境内の「お狐さん」の同じ部分を触ると治ると言われている。このため、ここのオスのキツネは右の耳が取れている。多くの人に触られたのであろう。

稲荷神社は、主祭神として狐を祭るものが約3000社あると言われているが、そのほかに、境内社・合祀など全ての分祀社として3万2千社もある。しかもそのほかに「屋敷神」として個人や企業などに祀られているものや、山野や路地などは数え切れないほどある。

とくに増えた江戸時代以降は、「伊勢屋、稲荷に、犬の糞」とまで言われるほどになった。いずれも、江戸の町のどこでも見られるということだ。

稲荷神社の狐の多くは座った姿だ。なかには稲などをくわえた姿もある。しかし、この写真のように跳ねているものは珍しい。

東京にはもう一ヶ所、足立区の千住大橋のたもとにある橋戸稲荷神社にも、跳ねたキツネが一組いる。

右の写真は、その橋戸神社のメスのキツネ。水稲荷のキツネとは作者が違うのであろう。顔つきがずいぶん違う。

左は、同じく橋戸神社のオスのキツネ。先を走っていてメスを振り返っている構図は上の水稲荷のキツネと同じだ。

そして、このオスも水稲荷のオスのキツネと同じく、こちらは鼻と口が欠けている。

なお、この橋戸稲荷や千住大橋は、松尾芭蕉が奥の細道に出発したゆかりの場所でもある。

【2014年11月に追記】東京には、このほか、墨田区押上にある「飛木稲荷神社」にも、はねているキツネがいる(右写真)。これはメスだ。上の写真のキツネと違って乳房が付けられているのが特徴だ。

ただし、このキツネは右下に移っているイチョウの落ち葉と比べれば分かるように、上の写真のキツネたちよりも、ずっと小さい。またこの写真に見られるほかのキツネと同様、「人相」も悪い。

この飛木稲荷神社にはこの写真のキツネと対になった跳ねているキツネのほか、すぐ上に別の一組の跳ねているキツネがいる。こちらはもっと大きく、早稲田に「水稲荷」に近い大きさだ。色も黒い。

しかし、どれも「人相」が悪くて、彫像としての出来はよくない。

なおこの飛木稲荷には樹齢が500-600年の墨田区内に現存する樹木では最古とされるイチョウがある。暴風雨のときにイチョウの枝が飛来してこの地に成長したことを、人々が瑞兆であるとして「飛び木」稲荷神社に祀ったと伝えられている。

第二次世界大戦の戦災のために焦げてしまって樹勢が衰えたが、現在は回復している。焦げ跡は、米軍による無差別の市民への攻撃、東京大空襲の凄まじさを伝え、都内に残る被災樹木としても希少な存在だ。


【2015年11月に追記】東京には、多くの稲荷神社があり、台東区浅草の浅草寺の境内にも「浅草稲荷」がある。ちなみに同じ境内には「浅草神社」もある。

この浅草稲荷には多くのキツネの石像があり、なかには写真のように、子ギツネをともなったキツネもいる。

このキツネたちは、上の飛木稲荷神社のキツネよりも「人相」はいい。しかし、まったく犬の顔である。

ここのキツネがしている朱色の前掛け(よだれかけ?)は、さすがに浅草、キルティングがしてあって、数ある稲荷のキツネの中でも、もっとも上等なものに見える。

なお、浅草寺は都内最古の寺院で、その歴史は飛鳥時代までさかのぼるという。当時は広漠とした武蔵野の一画で、東京湾の入江の一漁村にすぎなかった浅草で、目の前の江戸浦(隅田川)で漁業の網にかかった観音像を、以後、秘仏としている。このため、浅草神社のマークは漁網である。

ところで、これらのキツネを見ていて思いだした。

ドイツ北西部の北海の海岸近くにあるブレーメンで旧市街の中心にある市役所前には、ブロンズの「ブレーメンの音楽隊」の像が立っている(右下の写真)。こちらは金属製だ。

この地にも「ロバの足に触ると幸せになれる」という言い伝えがある。このため、左下の写真のように、ロバの足は前足だけではなくて後ろ足も真鍮の地が出てぴかぴかになっている。ついでに、ロバの鼻も金色に光っている。洋の東西を問わず、言い伝えが似ているのが面白い。

ブレーメンは、私がよく行くノルウェーのベルゲンと同じく、1200年の歴史を持つハンザ同盟の都市である。ブレーメンは「ブレーメンの音楽隊」で有名な町だ。

ロバの足に手が届かない妹が、兄に引っ張り上げてもらっている。この2分後に、兄妹はどうなったのだろう。その写真は。

(早稲田の水稲荷のキツネは2014年3月、千住大橋の橋戸稲荷のキツネは2013年10月、飛木稲荷のキツネは2014年11月、浅草稲荷のキツネは2015年11月に、ブレーメンの像は2004年7月にそれぞれ撮影)



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