島村英紀の裁判通信・その13
(2006年11月11日)

(結審。第11回公判。最終弁論と資料:島村英紀の最終陳述)


11月7日、第11回公判が開かれ、弁護団の最終弁論、及び島村英紀の最終陳述が行われました。

前回第10回公判で検察側は次のような論告求刑を行いました(「裁判通信12」参照)。

「被告人島村英紀は、ミエルデ教授に対し、売却意思及び権限があるように装い、受領する金員を自己の用途に費消する目的で、北大が管理する国有財産である海底地震計等の売買代金名下に合計2026万円を詐取した」として、「懲役4年」を求刑。

さらに「被告人は、自己が自由に費消する目的で北大に納入すべき代金を自己名義の個人預金口座に入金させて取得したものであり、それが被告人が行う海底地震の研究費用として費消する目的であったにせよ、正当化できないことは明白」としました。

今回の弁護側最終弁論では、検察が無視した証人尋問の破綻を指摘し、また相手が「だまされていない」といっているにもかかわらず「詐欺」として告訴したことへの妥当性について、詳しく反論しています。

なんの根拠も示さないまま断罪している論告に対し、じつにわかりやすい弁論だと感心しました。

論告に対して、真っ正面から事実をあげて丁寧に弁論し、第2、第3で左右も後ろもきちんと押さえています。

やさしい文体で、しかも順を追って整理されているので、読めばすぐわかります。私どもが要約などしないほうが、真実が伝わると考え、「最終弁論要旨」をそのままお届けします。

その弁論要旨の最後にある「結語」だけここに記しておきます。

「以上詳論してきたとおり、どのような観点から眺めても、被告人には詐欺罪は成立しないから、被告人は無罪である。裁判所におかれては,事実を外形的にのみ捉えるのではなく、その実態をつぶさに検討され、適切な事実認定をしていただきたいと切望する」

「読めば読むほど、すごい!」という感想です。実力のある弁護団でよかったと感じています。

この弁論のように、複雑な事件をいろいろな角度からわかりやすく展開してくれるなら、「司法制度改革の裁判員」になってもよいかなという気もしてきます。いかがでしょうか?

また島村英紀の最終陳述は、「日本と世界の学者を束ねて海底地震の研究をしてきて、北大退官後も研究グループを維持しつづける予定だったが、この告訴によって続けられなくなったことを無念に思い、さらに研究を継続してほしい」と結んでいます。簡潔で素晴らしい言葉でした。

なお民事訴訟の詳細については次回通信にまとめます。裁判はこれで結審して、来年1月12日に判決が出ます。

<編集部>


第11回公判傍聴報告  

最後だというのに、何故かいままでの担当検事がいず、代わりに女性検事が出廷していました。どうにもよく分かりません。

前回の検事側論告で、起訴状にあった「金銭を私したこと」について触れなかったあたりから、何か変化を感じてしまうのですが・・。

弁護団は、早口ながら淡々といままでの検察の主張を論破していったと思います。約1時間で終了しました。

今回は弁論要旨に尽きますが、最後の島村さんの意見開陳、あれは抑制が利いていて、しかも早口でもなく、とても良かったと思います。



島村英紀の最終陳述

私はいまから40年前、1964年に理学部の学生を終えて以来、一貫して研究者の道を歩んでまいりました。いわば、人生のすべてを賭けて研究に没頭してきたつもりです。

研究分野は地球物理学という学問で、これは地球全体を相手にする学問です。

人類は地球の資源を使って生きています。その人類の未来を考えるためには、地球をもっと知らなければなりません。また、日本などでは、地球が起こす地震や火山の噴火について、もっとよく知ることによって、自然災害を減らすことが可能です。

このため、いままで私は各国の研究者と協力して、地球に残された謎を解くために、世界の各地で研究を続けてきました。ノルウェーは、その研究の現場の一つです。

私がベルゲン大学のセレボール教授らと研究を続けてきたノルウェー沖の深い海の底で生まれているプレートは、地球を約半まわりして日本海まで来て、1993年に起きて大きな被害を生んだ北海道南西沖地震のような、日本に災害を起こす巨大な地震を起こします。

また、このプレートは、人類にとって限られたエネルギー資源である北海油田の石油を生むプレートでもあります。

このように、私がセレボール教授とやってきた研究は、日本の自然災害の研究でもあり、人類の使える資源の研究でもあるのです。

私と共同研究を始めたセレボール教授、そして、あとから参加したミエルデ博士、ともに、私にとって、とてもいい研究仲間、かけがえのない研究の同僚でした。

研究は順調に進んで、世界で評価される十分な業績も得てきたと思います。

私がセレボール教授やミエルデ博士とやってきたことは、彼らに感謝されこそすれ、決して被害を与えたり、まして、恨みを買ったりするようなことではなかったと、いまでも信じております。

私は、いま、刑事被告人になったばかりか、研究を続けられなくなったことを、なんとも無念に思います。

いま願っていることは、残っている研究をぜひ、ノルウェー側でも日本側でも続けてほしい、それが科学の人類に対する貢献だ、ということです。

幸い、私はこの裁判では、大変有能で、熱心な弁護士の先生たちに恵まれ、また全国各地の方々から支援をいただいてきたのが励みになっております。

今回の裁判では、丁寧にご審議いただき、ありがとうございました。

(以上)

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