『日本人が知りたい地震の疑問66----地震が多い日本だからこそ、知識の備えも忘れずに!』
サイエンス・アイ新書

2008年8月発行。サイエンス・アイ新書
2008年8月中旬発売(本の奥付の発行日は24日)。ソフトバンク クリエイティブ株式会社。
横幅が大きな変型新書版(横11.5cmと1.2cm大きい。縦は17.2cmで同じです) 。
本文206頁。ISBN978-4-7973-4717-3。952円+税=1000円


(クリックすると拡大します)。なお、表紙のもう一つの候補はこちらでした。

この本は大幅に加筆・改訂して、2011年5月下旬に、『日本人が知りたい巨大地震の疑問50 東北地方太平洋沖地震の原因から首都圏大地震の予測まで』(サイエンス・アイ新書)として出版されます。



この本の目次

はじめに
第1章:四川大地震(四川省地震)はなぜ起きた? 9
Q01:四川大地震はどのようにして起きたのですか? 10
Q02:なぜ四川大地震のような規模の地震が起きたのでしょうか? 13
Q03:四川大地震では、なぜあんなに大きな被害が出たのでしょうか? 16
Q04:四川大地震は中国で予測できていたのですか? 19
Q05:日本で四川大地震クラスの地震が起きたことはありますか? 22
Q06:日本でも四川大地震クラスの地震が起きる可能性はありますか? 25
Column Q07 最近の内陸地震から学ぶべきことは? 28
第2章:日本でいちばん地震の心配がない地域は? 29
Q08:日本でいちばん地震が起きにくいのはどこですか? 30
Q09:日本国内のどこに住めば地震の被害に遭わなくてすみますか? 32
Q10:地震が起きない国はありますか? 34
Q11:地震はどうして起きるのですか? 38
Q12:地震が起こるメカニズムとはどんなものでしょう? 42
Q13:世界でいままでいちばん大きかった地震はどのようなものですか? 46
Q14:地震が起きない国の人は、地震についてどのくらい知っているのでしょうか? 50
Column Q15 地震が「逃げる」とはどんな現象? 52
第3章:地震とはどんな現象? 53
Q16:なぜ、震度とマグニチュードを区別しているのですか? 54
Q17:なぜ震度表示に「弱」や「強」などがつくのですか? 56

Q18:歩いている人や乗り物に乗っている人は、どの程度の震度で地震とわかりますか? 60
Q19:発表される地震の震度と実際に感じた揺れの度合いが違うのはなぜでしょうか? 62
Q20:震源地から遠く離れた場所が、強く揺れたりするのはなぜですか? 65
Q21:震度5以上の地震は、どの程度の確率で発生するのでしょうか? 20
Q22:最大でどれくらいの震度まで起こりえるのでしょうか? 71
Q23:なぜ地震の多い日本に原子力発電所があるのでしょうか? 22
Q24:冬に地震が起きやすい、というのは本当でしょうか? 79

Q25:地震の余震はどれくらい続くものなのなのでしょうか? 81
Q26:同じ地域に大きな地震が何度も来るのはなぜなのでしょうか? 85
Q27:地震が多発し始めると、それは大地震の起こる前兆ということなのでしょうか? 88
Q28:地震と火山の活動には関係があるのでしょうか? 90
Q29:地震の名前にはなぜ似ているものが多いのでしょうか? 93
Column Q30 昔は人間が体感で震度を決めていた? 96

第4章:地震は予知できる? 99
Q31:大地震の前に聞こえるという「地鳴り」は、どれくらい前から聞こえるのでしょうか? 100
Q32:地震の前兆現象は、なぜあとになってから発表されるのでしょう? 102
Q33:人間にもなまずのように、地震の感知能力がある人がいるのではないでしょうか? 105
第5章:地震予知はなぜむつかしいの? 107
Q34:なぜ現代科学をもってしても地震予知はできないのでしょうか? 108
Q35:地震予知の研究は、国のどの機関がどのように行っているのでしょうか? 110
Q36:地震の事前予知は現在どこまで進んでいるのでしょうか? 112
Q37:多くの予算をかけて長年研究しても、あまり地震予知の成果が出ないのはなぜなのでしょうか? 114
Q38:地震の予知はいつごろできるようになるのでしょうか? 117
Q39:東海地震だけは予測できるかもしれないという根拠はなんですか? 120
Q40:地震予知の研究に、税金はどのくらい投入されたのでしょうか? 122
Q41:地震は予知するより、起こることを前提に準備するほうが効果的だと思うのですが、どうなのでしょうか? 124
Q42:地震予測の確率は、どのように計算して公表しているのでしょうか? 126
Q43:地震予知という発想自体が間違っている、という説は本当なのでしょうか? 128
第6章:地震情報は信用できるの? 131
Q44:「緊急地震速報」はどうやって出しているのでしょうか? 132
Q45:緊急地震速報を知るには、テレビをずっとつけていないとだめですか? 135
Q46:有料の緊急地震速報があるそうですが、実際にどの程度役立つのでしょうか? 137
Q47:一般向けの緊急地震速報は本当に有効なのでしょうか? 139

Q48:地震が起きる数秒前ではなく、もっと早く予知して知らせられないものでしょうか? 142
Q49:国は地震予測を隠しているのではないでしょうか? 144
第7章:津波警報は信用できるの? 147
Q50:地震が起きると、なぜ津波が起きるのでしょうか? 148
Q51:地震による津波などの特別な対応方法はありますか? 151
Q52:地震による津波がもっとも危険な時間帯はありますか?153
Q53:どうしていつも津波警報よりも小さな津波しか来ないのでしょうか? 155
第8章:これからどんな地震がくるの? 159
Q54:東海大地震や東南海地震は本当に起きるのでしょうか? 160
Q55:すべての活断層で地震が起きるものなのでしょうか? 165
Q56:住んでいる地域の活断層はどうやったら調べられますか? 168
Q57:家の近くに活断層があった場合は、どうすればよいですか? 170
第9章:地震はコントロールできる? 173
Q58:地震はコントロールすることはできないのでしょうか? 174
Q59:地震は人工的に起こせるものなのでしょうか? 177

Q60:地震のエネルギーを変換して利用できないものでしょうか? 182
Column Q61「人造地震」の研究は日本ではタブー? 184
第10章:首都圏(大都市圏)大地震はいつ来るの? 185
Q62:首都圏を襲った地震には、どんなものがありますか? 186
Q63:関東大震災は本当に起きるのでしょうか? 188
Q64:関東大震災で、地震と火事の被害はそれぞれどのように広がったのでしょうか? 191
Q65:高層ビルでは上のほうが揺れがひどい、と聞いたことがありますが、本当ですか? 194
Q66:大地震のとき、高層ビルは実際にどのくらい揺れるのでしょうか? 197
あとがき 202
索引 204


はじめに

 私は地震についての本を何冊か書いたことがありますが、この本は、そのどれともちがって、まず、読者の関心事を知るためのアンケートからはじまりました。

 編集部の方が、「サイエンス・アイ新書」の読者に、インターネットで地震についてのアンケートを取ってくださって、約5000人もの回答がありました。アンケートの結果はこの本を作るのにとても役立ちました。

 回答者の内訳は男59%、女41%。年齢別では40歳代と30歳代がともに34%、50歳代が14%、20歳代が11%と続き、60歳以上も6%、10歳代も1%いました。働き盛りの人たちが多く、それ以外の年齢層にも広く分布しています。

 また住所別では、関東在住が41%、近畿在住が19%と多かったのですが、そのほか、北海道から沖縄まで全国に分布していました。

 このアンケートは9つの質問のほか、「地震について、こんなことが知りたいということがあればお書きください」という自由記入のものがありました。

 私が衝撃を受けたのは「阪神淡路大震災経験者です。地震というものはいくら気をつけていても助かるときは助かりますし、ダメなときはダメです。悲しいですが」という記入でした。

 また「人間がどんなに地震を研究していても大自然や地球規模の大きな力はいつ起きるかわかりません。運命と自然に身をまかせるしかないのが人間です。とくに知りたいことはないです」というのも地震学者としての私にはショックでした。

 いや、そんなことはありません、地震について正しく知り、正しく恐れることが、地震から身や家財を守ることになるかもしれません。本当は、そう言いたいのですが、あいにくと私が研究してきた地震学は、まだ、皆さんに安心してもらうには、あまりに遠いものなのかもしれません。

 地震について、いままでなにが分かって、なにがまだ分かっていないのか、それを知ってほしいと思って、この本を書きました。

 この本を読んで、地震のことは、まだ意外に解明されていないのだな、と思うかもしれません。日本の政府は「東海地震は予知できる」として、地震を予知することを前提とした法律も、体制もすでに走っています。しかし、地震予知はできないという学問の現実を見てほしい、不意打ちに備えてほしい、というのが私の立場です。

 一方で、もしいままで知らなかったことがあって、この本で地震のことを知ってよかった、と思ってもらえれば、著者としてはとても嬉しいことです。

 じつは、アンケートの自由記入でかなりの部分は、地震に対してどう備えればいいのか、地震が起きたあとどうすればいいのか、といった質問でした。

 この中には「地震に対して強い/弱い地盤とは?」「地震発生最中の心得など、抽象的な警句ではなく具体的な行動・心理を教えてほしい」「避難場所は本当に安全なのか?」「知られていないがあると便利な防災用具は?」「免震・制振・耐震のうち、地震の際に最も効果的なのはどれ?」といった切実なものも多くありました。

 この本を作るにあたり、編集部の石周子さんには、最初から最後まで、大いにお世話になりました。

 その石さんとお話しをして、これらへの回答も含めて全部を一冊の本に載せるのは多すぎて無理でしょう、ということになりました。皆さんの地震への関心は、それほど広いものだったのでした。

 そして、まず作ることになったのがこの本なのです。ですから、これらの質問への答えは、この本にはありません。地震とはどんな現象なのか、地震の揺れ、そして地震予知ができるのかどうか、気象庁はどんな情報を出しているのか、といったことをまず読者に知ってほしい、ということになったのです。

 もし、この本の評判がよければ、続編として、残った質問に対する答えの本を作ろうと思っています。

2008年7月 島村英紀


【コラム 007】 最近の内陸地震から学ぶべきことは? 

 阪神淡路大震災(1995年)のとき、作家の野坂昭如は神の存在を確信したと書きました。戦前の大水害や第二次世界大戦での空襲の大被害からの復興だけではなく、市街地開発や山を削って海を埋め立てる国土改造の先兵だった神戸を地震が襲ったこと、しかも季節が冬で、新幹線が通る寸前の明け方だったことが、偶然にしては、あまりにできすぎていたからでした。

 その後も、日本に起きる地震は、発表されている「地震危険度(Q08参照)や、政府が危険度を計算して発表している活断層調査(Q56参照)をあざ笑うように、危険とされていないところばかりに起きています。2000年の鳥取県西部地震、2004年の新潟県中越地震、2005年の福岡県西方沖地震、2005年の首都圏直下地震、2007年の能登半島地震、2007年の新潟県中越沖地震、2008年の岩手宮城内陸地震、どれもそうでした。

 しかも、原子力発電所を作るときに「日本の内陸ではマグニチュード6.5を超える地震は起きない」ことを前提にしている(Q23参照)のに、それよりもずっと大きな内陸地震が起きているのです。

 新潟県中越沖地震も、東京電力が首都圏や自分の電力供給圏の外に作った柏崎・刈羽原発を襲いました。そのうえ、原発を作るときに「将来起こりうる最強の地震」とか「およそ現実的ではないと考えられる限界的な地震」と想定していた揺れ(加速度)をはるかに超える揺れが記録された(Q22参照)のでした。

 これら想定外の地震は、自然からの警告かもしれません。この警告を読みとって、この次の地震が致命的な災害をもたらさないために備えておくことが出来るかどうか、人類の知恵が試されているのです。


あとがき

 地震にしても、火山噴火にしても、また大雨による洪水にしても、人類が地球に住み着く前からくり返し起きてきた現象です。

 地球の歴史である46億年を1日とすれば、私たち人類が生まれたのは最後のたった1分なのです。つまり私たちが日本に住み着くはるか前に日本列島が作られ、地震や火山の噴火も何千回、何万回と起こりつづけてきているのです。

 たまたま人間が住んでそこに文明を作っていなければ「災害」は起きません。災害とは、自然に起きる現象と人間社会との接点で、ふたつが複合されてはじめて起きる「事件」なのです。

 人類の歴史で、あいにくと災害に対する備えは、いつも災害のあとを追いかけてきました。文明が発達するたびに新しい災害が生まれてきているのです。地震にかぎらず、新しく作られた文明は、昔のものよりは災害に弱いことが多いのです。

 ところで、地震そのものが人を殺したことはほとんどありません。人間が作ったものがこわれて人が巻き込まれる例がほとんどなのです。

 いままで地震や火山噴火といった自然災害は、人類史上、たびたびの大被害をもたらしてきました。その意味では、地震も火山も、私たち人類にとっては「疫病神」には違いありません。

 しかし、地球物理学者である私の考えは少し違います。地球は、表面こそある程度冷えて、私たちが住める程度の温度になってはいますが、中では熔けた岩がまだのたうちまわっている「生きた」星なのです。

 地球の内部には巨大な熱源があり、それがプレートを動かす原動力になっています。そしてそのプレートの動きが地震を起こしたり、マグマをつくって噴火を起こしているのです。

 私たち人類は、自然災害をこうむっている一方で、地球が生きて動いているということの大きな恩恵も受けていることを忘れてはいけないでしょう。

 そもそも日本列島が出来たのもその恩恵のひとつです。たとえば千葉県の房総半島の太平洋岸には、何段もの広い海岸段丘があります。これらの段丘は、大地震のたびに半島が跳ね上がって、海底が陸地になって、陸地が増えていったものなのです。

 また私たちが山河の風景をめでたり、温泉を楽しむことができるのも、地球が生きて動いている結果です。

 日本列島ができたことと、地震や噴火とは、地球という星にある同じメカニズムと同じエネルギーの源泉からきています。災害と恩恵とは、地球が生きて動いていることとの裏と表になっているのです。


出版後に気がついた訂正(ミスプリント)
この本のモノクロ写真をカラーで見てみれば。

この本についての書評と、寄せられた読者の声
「東京新聞」2008年9月30日朝刊(火曜。科学面)「新刊情報」に紹介されました。

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