島村英紀『夕刊フジ』 2014年1月1日(水曜)。5面。コラム「2014年 50テーマ大予測」

3・11から3年、あらためて考える首都直下地震

 東日本大震災(東北地方太平洋沖地震=マグニチュード(M)9)は東日本全体を載せたまま北米プレートを東南方向に大きく動かしてしまった。正確な測定は陸上部だけしかできていないが、宮城県の牡鹿半島では5.2メートル、首都圏でも30-40センチもずれた。このために、日本列島の地下がリセットされてしまったことになる。各所に生まれたひずみが地震リスクを高めている。

 もともと首都圏は、世界でも珍しいほど地震が起きやすいところだ。それは首都圏の地下には、プレートが3つ(太平洋プレート、北米プレート、フィリピン海プレート)も同時に入っていて、それぞれのプレートが地震を起こすだけではなくて、お互いのプレートの相互作用で地震を起こすからだ。

 世界では2つのプレートが衝突しているために地震が多発するところはある。しかし3つのプレートが地下で衝突しているところは少なく、なかでもその上に3000万人もの人々が住んでいるところは、世界でもここにしかない。

 さきの11月に茨城県や千葉県の地下を震源とするM5クラスの地震が続発したように、もともと少なくはない首都圏の直下型地震は、東北地方太平洋沖地震以来、様相が変わってきたように見える。これらの地震は地下がリセットされてしまったことと無関係ではない。

 じつは、もっと間の悪いこともある。地震にはM8を超える「海溝型地震」と、M7クラス以下の「内陸直下型地震」の二種類がある。海溝型地震は一般には日本の沖で起きるが、首都圏だけが海溝型地震が「直下」で起きてしまうという地理的な構図になっているのだ。このため、いままでも関東地震(1923年)や元禄関東地震(1703年)といった海溝型地震が首都圏を襲った。

 このうち元禄関東地震のほうが地震としては大きく、小田原で津波による大被害が出たほか、海から2キロも離れている鎌倉の鶴ヶ丘八幡宮まで津波に襲われた。
 
内陸直下型地震はくり返しが分からないが、海溝型地震はくり返す。元禄関東地震、関東地震とくり返してきた地震も、以前はあと100年ほどは起こるまいと思われていたのが、東北地方太平洋沖地震の影響で、もしかしたらもっと早まるかもしれないと思われはじめている。

 江戸時代から現在までの首都圏の地震活動を見ると、不思議なことに関東地震以来の90年間は異常に静かだったことが分かる。たとえば東京では、この間に震度5は5回しかない。しかしその前の300年間はずっと多かったし、被害地震も多かった。

 じつは元禄関東地震のあとも70年間、静かな期間が続いたのである。首都圏は一時の静穏期間が終わって、いわば「普通の」、つまりいままでよりは活発な地震活動に戻りつつあるのだろう。

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