地震も火山も台風も地球のなかで起きる災害だ。だが、地球外部から「降ってくる」災害もある。
それは「太陽フレア」というものだ。太陽から出る磁気と電気を帯びたガスの流れであるフレアが、ときどき強くなって地球を襲う。
いままでも地球に被害を及ぼしてきた。たとえば1989年には米国やカナダにある発電所の機器に障害が発生して9時間もの大規模な停電になった。2003年には日本の環境観測衛星が破壊されて数十億円もの損失を出した。
太陽フレアは地球に「磁気嵐」を起こしてこのような災害を起こす。過去には1989年の例よりはずっと大きな太陽フレアが地球を襲ったことが知られている。たとえば1859年には近代以降では史上最大の磁気嵐が発生した。
このとき米国ロッキー山脈で強いオーロラが出て、その明るさのために鉱夫が朝と勘違いして起きて朝食の支度を始めてしまった。緯度がもっと南のカリブ海沿岸でもオーロラが観測された。
当時は現代ほどは社会システムが進んではいなかったので被害は限られていた。それでもヨーロッパや北米全土の電報システムが停止。電信用の鉄塔は火花を発し、電報用紙は自然発火した。
だが、最近の研究では、過去1300年の間に2度、もっとすさまじい磁気嵐が地球を襲ったことが分かった。1859年の磁気嵐の5〜20倍も強かった。
これは南極大陸とグリーンランドから採取した氷河のボーリングから証拠が見つかったからだ。これは氷河の中に含まれる硝酸塩濃度を分析して分かった。太陽フレアという高エネルギー線によって大気の上部に窒素酸化が起きる。それが雪に閉じ込められて降り積もった氷河の下部で見つかったのだ。
この2つの事件は774〜775年と993〜994年だと思われている。774年には日没後の空に「赤い十字架」が現れたと欧州の古文書にある。屋久島の杉に炭素の同位体C14が異常に多かったこともこの年だった。
幸い、この2つの事件とも、あまりに昔のことなので「文明」への悪影響はなかった。しかし、現代ではそうはいかない。
この2件よりはずっと小さかった1859年なみの太陽フレアが地球を襲っても、米国だけでも停電が5カ月以上続き、米国だけで2000〜4000万人が影響を受け、総額6000億〜2.6兆ドルの経済的犠牲を伴うとする予測がある。また衛星を利用した技術や通信手段も大混乱に陥るはずだ。
じつは2014年と2012年には1859年なみの太陽フレアが地球をかすめていたことが最近分かった。太陽フレアは太陽からまんべんなく出るのではなく、方向性を持っている。地球は太陽のまわりを公転しているから、もし発生が1週間前にずれていたらフレアは地球を直撃する恐れがあった。
この種の巨大な太陽フレアは、いままで考えられていた以上に高い頻度で起きることが分かった。1859年なみの磁気嵐が今後10年間に発生する確率は12%という研究もある。
地球に外から降ってくる災害も、警戒すべきもののひとつなのである。
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