島村英紀『夕刊フジ』 2016年1月22日(金曜)。5面。コラムその136 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

地下深くの震えが大地震を誘発
『夕刊フジ』の公式ホームページの題は「地下深くでの震えが大地震を誘発 記者会見で触れられなかったコト」

 先週14日、北海道・襟裳岬の西沖でマグニチュード(M)6.7の地震が起きた。北海道南部や東北地方北部で震度5弱だった。

 どこかで震度5弱を超える地震が起きると気象庁では記者会見を開くことになっている。今回の会見では「地震の巣のようなところだから地震はよく起きる」という内容だった。

 たしかに千島海溝と北海道の間では多くの地震が起きる。浦河町で震度6を記録した「浦河沖地震」(1982年、M7.1)もそうだ。千島海溝は太平洋プレートが北米プレートの下に潜り込んでいくところで、日本でいちばん地震が多いところなのである。

 しかし記者会見では触れなかったことがあった。この地震の2日前、北海道西方沖を震源とする「稍(やや)深発地震」が起きていたことだ。Mは6.0。震源の深さは260キロだった。

 この稍深発地震が2日後のM6.7の地震の引き金を引いたのではなかったか、という疑いがある。これは太平洋プレートが潜っていった先で起きた地震だ。

 プレートが潜っていく先で震源が深い稍深発地震やそれ以上に深い深発地震が起きてから、そのプレートの浅いところで大地震が起きた例が多いことが学説では指摘されている。

 たとえば2003年に北海道十勝沖で起きたM8.0の海溝型地震、「2003年十勝沖地震」の2ヶ月前に、同じプレートの深さ500キロ近いところでM7.1の地震が起きた。そのほか13年前には深さ約600キロでM7.2の地震が起きていた。

 また1952年の十勝沖で起きて33人の犠牲者を生んでしまったM8.2の海溝型地震である「1952年十勝沖地震」の2年前、深さ300キロあまりのところでM7.5の地震が先行して起きていた。これ以外にも小さめの深い地震が数年以内に比較的多く起きてからこの浅い1952年十勝沖地震に至ったのだった。

 つまり、深いところで地震が起きると、それによってプレートの「留め金」が外れて、その後に浅い海溝型の大地震が誘発されることがある。時間差は数日以内のこともあり十数年のこともあった。

 ところで東京で震度5弱を記録した2014年5月5日に伊豆大島近海で起きたM6.0、深さ160キロの稍深発地震が、いずれ首都圏の浅い地震に結びつくものかどうか、地震学者は注目している。

 その深発地震の起きた太平洋プレートを海溝の方向に辿(たど)っていったところに首都圏があるからである。

 2015年5月30日にも小笠原近海でM8.1、深さ680キロの深発地震も起きた。首都圏の地震を「窺(うかが)っている」深い地震はひとつではないのだ。

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