島村英紀『夕刊フジ』 2016年4月15日(金曜)。5面。コラムその147 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

「バミューダ・トライアングル」の正体
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「日本近海でメタンハイドレートの大爆発が起きなければいいのだが…」

 「バミューダ・トライアングルのナゾ」が、ようやく解けるかも知れない。

 船や飛行機が忽然と消えてしまった原因不明の事故が多発している米国東岸沖の3地点を結んだ三角形の大西洋の海域のナゾのことだ。

 3地点とは米国のフロリダ半島の先端とプエルトリコ、バミューダ諸島だ。面積は約400万平方キロメートルある。

 このナゾをめぐって、いままで多くの小説、映画、漫画などが製作されてきた。

 最近、このナゾが解けるヒントになる発見があった。

 それはスカンジナビア半島の北に広がっているバレンツ海の海底で、いくつもの巨大なクレーターが見つかったことだ。

 最大のものの直径は800メートル、深さが45メートルもある。発見したのはノルウェー・トロムソ大学の研究者だ。

 バレンツ海は水深約400メートル。浅くて平らな海で、タラの好漁場になっている。あまりに平坦で凹凸のない海底なので、私たちの海底地震計をノルウェーの観測船で設置したときには、多くのタラが魚礁代わりに海底地震計のまわりや上に集まってしまった。

 海底が平坦なのでクレーターを見つけやすかったのであろう。研究者は、この巨大なクレーターは海底にある天然ガスの爆発によって出来たに違いないと言う。

 「犯人」はメタンガスだった。自然界に存在する無臭のガスだが、海の底では水圧を受けて固体になる。氷のような無色の結晶、メタンハイドレートである。

 陸地から流れ込んだ生物の死骸など有機物が分解してメタンガスが発生し、海底でメタンハイドレートが作られる。将来のエネルギー資源として各国から注目されているものだ。

 陸地に近い世界の海底に広く分布している。ノルウェー沖にもバミューダ沖にもある。

 メタンハイドレートは可燃性で「燃える氷」といわれる。激しく爆発することがあり、石油採掘作業員などに危険が及んだこともある。

 今回バレンツ海で発見されたような大きなクレーターは、メタンハイドレートが海底で大規模な爆発をしたので出来た可能性がある。

 クレーターを作った爆発はいつ起きたものかは知られていない。この種の海底爆発は、津波を生んだり、地震のような大きな振動を起こすことが考えられる。

 ノルウェーの研究者は、こういったクレーターを作るような急激なガスの爆発は、バミューダ・トライアングルのナゾを解く可能性があると言う。

 そこを、たまたま船が通りかかったら被害を受けるかも知れない。爆発の規模が大きければ、もしかしたら飛行機にも影響するかも知れないのだ。

 ところで、日本列島の沖には、太平洋岸にも日本海岸にもメタンハイドレートが大量にある。世界有数の埋蔵量と言われている。

 日本近海で、この種のメタンハイドレートの大爆発が起きなければいいのだが。

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