驚くべき結果が3月に発表された。昨年11月22日早朝に起きたマグニチュード(M)7.4の福島県沖地震で、6割近くが避難せず、避難者の5割以上が車で避難していたことが分かったのだ。
東日本大震災で津波の怖さが知れ渡ったはずだし、政府は「車で避難するな」と口をすっぱくして言ってきたのに、この結果だ。
宮城・石巻市で東日本大震災のときの津波浸水域に住む5000世帯を対象に調査したものだ。調査を行ったのは石巻市と東北大学など。
津波注意報は朝6時2分、避難指示は8時5分、そして津波警報は8時9分に出された。地震が発生した5時59分に在宅していた人は約9割。過半数は就寝中だった。
逃げなかった人々の67%は「大きな津波は来ないと思った」という。これは気象庁の津波警報が、まだ信用されていないことを示している。
信用されなくなってしまったのには長い歴史がある。1998年5月に起きたM7.7の「石垣島南方沖地震」のときに出された津波警報は「沖縄、九州、四国、そして本州の南岸に最大2〜3メートルの津波」という警報だった。だが、拍子抜けのものだった。実際に来た津波は、わずか数センチのものだったからだ。
2003年9月にはM8.0の「2003年十勝沖地震」が起きた。ほとんど同じ規模だった「1952年十勝沖地震」で6メートルを超える津波で甚大な損害をこうむった北海道東部の厚岸(あっけし)町でも、勧告に応じて避難した人はわずか8%にとどまった。実際の津波は警報よりもずっと小さくて被害を起こすようなものではなかったから、人々の判断は間違っていなかったことになる。
20年も過大な津波警報がくり返されたので人々は警報を信用しなくなってしまっているのだ。東日本大震災のあとでさえ津波警報が信用されていないというのは重大なことだ。
同じ大きさの地震が同じ場所で起きても、海底での地震断層の動きかたが違えば津波の高さは大変に違う。
いまの仕組みは地震の震源と地震の規模だけが最初に分かった段階で「考えられる最大」の津波を想定して警報を出す。だが地震断層の動きかたによっては実際の津波の大きさが最大を想定したときの何百分の1にもなってしまうのだ。
気象庁は津波警報を信用されるものにすることこそを心がけるべきなのである。
「車で逃げるな」にも問題が山積している。
回答にあった「車を使わないと家族が避難できない」ことや、避難先で「寒さをしのぐために車が必要」なことを行政は考えていないのだろう。「車は大切な財産だから失いたくない」というのも4割以上あった。
石巻では、この警報騒ぎで車で避難するときに渋滞したと答えたのは17%に過ぎなかった。これは幸いなことだった。だが、いつも、そしてどこでも、当てはまることではあるまい。
津波警報には、まだ多くの問題があるのである。
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