島村英紀『夕刊フジ』 2017年6月30日(金曜)。4面。コラムその204「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

地滑りが引き起こす大津波
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「小さな地震にも注意!地滑りが引き起こす大津波」

 小さな地震でも大きな津波を引き起こす可能性が指摘されはじめた。

 先週、グリーンランド中部の西海岸にある寒村ヌーガーツィアク村がいきなり津波に襲われて4人の村人が津波にさらわれて行方不明になった。人口100人という小さな村だったから、4人はとても大きな数字だ。家も11棟が津波で流された。

 北極圏のグリーンランドでは内陸は厚い氷河に覆われているから、海岸近くの狭い場所にしか住めない。その村のひとつが襲われたのだった。

 この近辺はめったに地震が起きない。いままで起きた地震もマグニチュード(M)4クラスのごく小さい地震だった。

 先週もM4.1の地震が起きていた。だが通常は、M4クラスの地震が津波を起こすことは、まずない。このため、地元の警察も津波の原因についてはなにも発表しなかった。

 津波は海底が動くことで生まれる。普通は地震を起こす「地震断層」が浅くて海底面に顔を出していると大きな津波を生じる。地震が大きいほど、大きな津波が生まれる。2011年に起きた東日本大震災はM9で地震断層は南北400キロ、東西150キロにも拡がっていた。この大きな地震断層が海底を動かして大津波を生んだ。

 だが近年、ニュージーランドで、小さな地震が地滑りの引き金を引いて津波を起こす可能性が指摘されるようになった。

 ニュージーランド南島の中部にテカポ湖がある。約80平方キロ。十和田湖よりも大きく、日本でいえば5番目の大きな湖だ。湖底を調べたら、半分もが、かつて地滑りが起きた結果の堆積物で覆われていることが分かった。それほどまで地滑りが多かったことになる。大きな地震の数よりもずっと多い地滑りが起きたのだ。これらの地滑りはかつて数多くの津波を起こしてきたに違いない。

 テカポ湖は観光客に人気のスポットで、昼は絵のように美しく、夜は満天の星空が素晴らしい場所だ。 ユネスコの星空保護区にも指定されている。

 地滑りには、陸上から地滑りが海に流れ込むことでも、あるいは海底で地滑りが起きることもある。どちらも津波を起こす。

 地震による震動の周期は東日本大震災のように地震が大きければ大きいが、地震が小さければずっと短くなる。たとえばM4の地震では5分の1秒より短い。

 他方、地滑りが起こす海水の動きは周期が数秒以上だ。たとえ地震が引き金を引いた地滑りでも、その地震の周期には関係ない。

 このため、たとえ地震が津波を生まなくても、地滑りの振動は長い周期を持っているので共振によって大きな津波が生まれることになる。

 グリーンランドの津波は、「小さな地震が起こした大きな津波」だった可能性が強い。世界のほかのところでも起きるかもしれない。

 日本でも18世紀に地震が起こした地滑りが九州・有明海に流れ込んで大津波が発生して15000人もが亡くなったことがある。他人事ではないのだ。

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