島村英紀『夕刊フジ』 2017年7月7日(金曜)。4面。コラムその205「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

梅雨や大雨が引き起こす「大規模地滑り」 地震の「後遺症」
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「四川大地震の“後遺症”が原因だった四川省”大規模地滑り”」

 地震から9年もたってから「後遺症」が出た。

 先月24日朝、中国四川省にあるアバ・チベット族チャン族自治州の茂県で大規模な地滑りが起きた。100人以上が生き埋めになるなど、多数の犠牲者を生んだ。地滑りは現地時間で午前6時前。多くの人はまだ家にいた時間だった。

 流れ出した土砂の量は東京ドーム6杯分以上の約800万立方メートルにもなった。これが一挙に崩れたのだ。

 中国の山間部では、地滑りがよく発生する。とくに雨季になると多く、今回も大雨が引き金になった。日本では梅雨の季節だが、梅雨前線は日本だけではなくて中国にも延びている。その影響で大雨が降ったのである。

 だが、この地滑りには伏線があった。それは2008年に起きた四川大地震である。四川大地震のマグニチュード(M)は7.9、8万7000人が犠牲になった。犠牲者の多くは地滑りによるものだった。

 そのときには、震源の※県(「さんずい」に文)のすぐ北にあって今回地滑りに襲われた茂県でも、地震による土砂崩れで観光バスが埋まり、観光客37人が死亡していた。

 今回の地滑りは、四川大地震の震源から近い。つまり地震後に不安定になっていた地盤が、大雨という引き金で崩れてしまったのが、今回の災害になったのである。

 四川大地震はインド亜大陸プレートがユーラシア大陸に過去に衝突し、まだ北上の勢いが止まらないので起こしたものだ。

 このプレートの衝突が起こしたのは四川大地震だけではない。2005年に起きたパキスタン地震(M7.6)は7万人以上の犠牲者を出したし、2015年に起きて5000人以上の人命を奪ったネパール地震(M7.8)も、同じ構図から起きている。

 ネパールでは、もっと前にも1934年にM8.1、1988年にM6.6の地震が起きて大被害を生んでいる。中国南部からパキスタンに至る一帯は地震常襲地帯なのである。

 ところで日本でも、大地震のときに大規模な地滑りが起きたところは多い。たとえば、四川大地震と同じ2008年に起きた岩手・宮城内陸地震(M7.2)で宮城・栗原市の栗駒山麓では大規模な地滑りや土石流が相次いだ。

 またM6.8の新潟県中越地震(2004年)で大きな被害を受けた新潟・山古志村(現長岡市)の地形は、じつは過去から繰り返してきた地震による地滑りが作った地形である。

 地滑りは、止まったときには「安息角(滑り出さない限界の角度)」で止まる。つまり、なにかの原因でまた滑る危険が大きくて不安定なところなのだ。

 2011年に奈良・十津川で発生した地滑りは台風12号による大雨が原因だったが、今回の中国で崩壊した量なみの土砂が滑った地滑りだった。

 地球温暖化で気象が凶暴化して、いままでにない大雨が降るようになっている。

 それだけに、過去の地震による地滑りが至るところにあり、このところ地震が多い日本でも「後遺症」が心配なのだ。

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