島村英紀『夕刊フジ』 2017年12月15日(金曜)。4面。コラムその227「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

太陽系外から来た初めての彗星
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「太陽系外からきた初めての彗星 秒速約30キロ以上、地球衝突なら大変なことに… 」

 ちょっと前になるが10月14日は地球にとって特別の日だった。初めて確認された太陽系外から飛び込んできた天体が地球に最接近する日だったからである。

 流れ星や流星群というものがある。これらは宇宙を飛び回っている隕石が地球の大気圏に飛び込んできて光るものだが、そのすべては太陽系のなかの出来事だった。

 たとえば流星群は毎年同じころに特定の星座の方向に現れる。2017年のふたご座流星群は12月14日16時頃に極大で、世界各地で見られた(註)。

 しかしこれも、その星座から来たものではない。太陽系のなかにある隕石群に太陽のまわりをまわっている地球が毎年、同じ時期に同じところに飛び込むから見えるだけで、その星座とは関係がない。所詮、太陽系の中だけの話なのだ。

 だが、10月の小天体は、その軌道を観測したところ、明らかに太陽系の外から太陽系に飛び込んできたものだった。つまりほかの恒星系からやってきたものだったのだ。いままで、このように外から来た天体が見つかったことはない。

どこから来たものかは分からない。だが、いちばん近いケンタウルス座α星さえも1秒間に30万キロ走る光の速度で4年以上もかかる遠いところだから、途方もなく遠くからやってきたことになる。

 この小天体は秒速約30キロ以上というとてつもない速度で太陽系のなかに飛び込んで来た。

 そして9月9日に太陽に最接近し、その後、太陽の引力の影響を受けて軌道を大きく曲げた。10月14日には地球から2400万キロのところまで接近したが、地球と衝突することはなかった。

 恒星間物体の衝突は速度が大きいから同じ重さの太陽系の小天体よりもはるかに大きなエネルギーになる。もし、衝突したら大変なことになるところだった。小銃から撃った弾丸の速度は毎秒1キロほど、戦車や軍艦を通す徹甲弾でも毎秒2キロほどだから、数十倍も速いことになる。

 速度が遅い太陽系の小天体でも、6600万年前にメキシコ湾に落ちた大きな隕石はマグニチュード(M)10にもなる震動や高さ300メートルを超える巨大な津波を生んだ。M10の地震とは過去100年間に世界で起きたすべての地震が同時に発生するような大きさだ。

 この小天体は珍しい形をしていた。いままで太陽系で見つかった小天体とはまったく違う外観で、その直径は400メートル以下だが、長さはその10倍以上もあった。つまり葉巻のような長細い形をしている。いままで太陽系で見つかった天体だと、長さはせいぜい幅の3倍ほどだったから、この小天体は異例に長い。

 色も太陽系の天体とは違って赤っぽい。これは金属か、または炭素を多く含む物質でできているせいだと考えられている。

 この小天体は地球から遠ざかっている。いま、火星の軌道よりも外側を飛んでいて、2019年1月には、さらに外側の土星の軌道を越える。

 この小天体は、もう太陽系には戻ってはこない。はるか宇宙の彼方に飛び去っていった。二度と観測にかかることはない。

註)新聞の発売日はほとんどの地域では14日木曜で(仙台などは金曜に発売)、その新聞の日付は15日金曜です。このため、紙面では「見られる」、15日の公式ホームページでは「見られた」に替えて芸の細かいことをしています。

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