島村英紀『夕刊フジ』 2018年2月2日(金曜)。4面。コラムその234「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

月でしか起きない不思議な地震
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「月でしか起きない不思議な地震「ムーンクエイク」、震源のほとんどが地球側のワケ」

 さる1月31日は「ブルームーンの皆既月食」だった。しかも今回の満月は、年間を通して2番目に大きい満月だったために、ふだんよりも大きな満月の皆既月食を楽しめたはずだ。

 ブルームーンとは1か月の間に2回満月が起こるとき、その2回目の月を呼ぶ言葉で、学術用語ではなくて俗称だ。実際に月が青く見えるわけではない。

 前回、皆既月食が見られたのは約3年前の2015年4月だった。前回の時は皆既月食の継続時間は12分間という短いものだったが、今回の皆既月食は晴れた地域では部分食が始ってから皆既食、そしてまた部分食の終わりまでのすべてを見ることができた。継続時間は3時間以上あり、皆既月食だけでも1時間半弱もあった。

 じつは今年の7月にも皆既月食があるが、東北地方より西でしか見えず、そのうえ皆既食のまま月が沈んでしまうから、見える条件はずっと悪い。今回以降で、今回のようないい条件で見られるのは2022年11月。4年先になる。

 一方、今回の月蝕はブルームーンだった。ブルームーンの皆既月食は1982年以来で35年ぶり、次にブルームーンの皆既月食が見られるのは2028〜29年の年をまたいで起きる皆既月食になる。11年先になる。

 月食は太陽と地球と月がこの順に一直線に並ぶときに起きる。天体の中を太陽が通っていく道を「黄道(こうどう)」というが、これが月の通り道「白道」と一致したところを太陽と月が通るときに月食や日食が起きる。

 皆既日食は月の影に地球の一部が入るときに起きる現象だから、月の4倍も大きな地球の影に月が入る月食のほうが、見られる機会はずっと多い。

 ところで月にも地震が起きている。それがわかったのは1960年代のアポロ計画で月面に地震計を置いて以来のことだ。「地震」ではなく、英語では「月震(ムーンクエイク)」と言われている。

 地球と違って月には空気がないために、頻繁に隕石の衝突が起きていて、それが地震計に記録された。だが、それ以上に不思議な、月にしかない地震が起きていたのだ。

 地球ではたいした地震ではない。最大のマグニチュードは約4だ。

 それは震源のほとんどは地球に向いている側だけだったことだ。また太陽の向きと地震の起きかたも関係していた。

 つまり月の地震は地球と太陽の引力で月がゆがむことで引き起こされていたのである。

 もうひとつ特徴的だったのは、地震が起きる深さだった。ほとんどの地震は、深さが900〜1100キロという深いところで起きている。月の半径の半分を超えるくらいのところだ。

 巨大な溶けた鉄の球という熱源を抱えている地球と違って、月はいちばん中まで固体だ。だが、この深さのところにひずみが溜まるメカニズムがあるのだろう。

 ちなみに地球の地震は、地球の半径の1/10くらいまで、それも特別なところだけにしか起きない。こんな深いところに地震は起きないのである。

この記事
このシリーズの一覧

島村英紀・科学論文以外の発表著作リストに戻る
島村英紀が書いた「地球と生き物の不思議な関係」へ
島村英紀が書いた「日本と日本以外」
島村英紀が書いた「もののあわれ」
本文目次に戻る
テーマ別エッセイ索引へ
「硬・軟」別エッセイ索引へ



SEO [PR] 住宅ローン フラワーギフト 必勝祈願 冷え対策 動画 無料レンタルサーバーSEO