島村英紀『夕刊フジ』 2018年6月29日(金曜)。4面。コラムその254「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

大阪の地震、東京襲えば甚大被害
「夕刊フジ」公式ホームページの題は「大阪の地震から教訓学べるか 東京を襲っていたら被害はより甚大… 」

 さる6月18日に起きた大阪府北部の地震では都市型被害が目立った。

 ブロック塀が倒れて死者が出たほか、駅間で緊急停車した列車が143本、閉じ込められた乗客は約14万人、帰宅困難者が400万人に上った。エレベーターに閉じ込められた件数は339件で東日本大震災(2011年)の1.6倍もあった。

 断水やガスなどライフラインの寸断が続いた。ガスの開栓作業には住民の立ち会いが必要だが、仕事で日中は不在が多いという都市型の事情もあった。

 この地震は深さ13キロと浅い直下型地震で、マグニチュード(M)も6.1だったので、被害地域も大阪府の北部と京都府の南部に限られていた。この地域は大阪と京都の中間にあって戦後に開発された新興住宅地が多く、風光明媚なこともあって、富裕層が多く住む。庶民が多く古い町並みが残る大阪南部に比べて「大阪の南北問題」ともいわれるくらい違う。

 もし、この地震が大阪の南部を襲っていたら、地盤も悪く、古い住宅が密集している地域だけに、被害はずっと大きかった可能性がある。

 そして、もし、この地震が東京を襲ったら比べものにならないほどの被害を出しただろう。地震に弱い木造住宅密集地帯をはじめ、地盤が悪いところが多い東京は地震にはずっと弱い。しかも東京は日本の政治経済の中心で影響も大きい。

 「東京」の名がついた唯一の地震があった。ちょうど124年前の1894(明治27)年6月に起きた「明治東京地震」だ。

 地震Mは7.0、震源は東京湾北部だった。この地震で建物の全半壊 130棟、死者 31人を生んだ。

 いちばん目立ったのは当時の文明開化の足元を直撃した地震だったことだ。当時流行していた西欧型のビルや煙突などの建築物を真似ても地震国には適さないということが分かった地震だった。

 不幸中の幸いだったこともあった。震源の深さは40〜80キロと直下型地震としては深かったので、Mのわりに被害は限られていたことだ。

 当時は、まだちゃんとした地震計がなく、深さも震源もあいまいだった。震源が首都圏の地下に潜り込んでいるフィリピン海プレートか太平洋プレートか、その内部か境界かは分からない。

 だが直下型地震には今回の大阪の地震のようにもっと浅いこともありうる。もし今度来る東京の地震の震源がもっと浅かったら、同じMでもはるかに大きな被害を生むに違いない。

 しかも、文明が進んだだけ地震に弱くなっている。東京湾のまわりはほとんどが人工海岸で埋め尽くされ、しかもそこには重要な施設や発電所や工場が立ち並んでいる。

 18日の大阪の地震の揺れでは、ごく短周期が卓越していた。そのため家を倒さず、ブロック塀や家具を集中的に倒した。これは堆積層が薄いところの特徴だ。近畿地方で活断層が例外的によく見える理由でもある。

 しかし、東京など首都圏ではちがう。家を倒す周期の地震波が襲って来る可能性が強い。

 首都圏は大阪の地震の教訓から学ぶことが出来るのだろうか。

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