島村英紀『夕刊フジ』 2018年7月20日(金曜)。4面。コラムその257「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

7.31 火星が15年ぶりに大接近
「夕刊フジ」の公式ホームページの題は「7・31 火星が15年ぶりに大接近! 地球より進化した高等生物いても不思議でない星「LHS 1140b」とは?」

 火星が15年ぶりに大接近する。夜更けに南の空を見ると、低い位置に4つの明るい星がある。いちばん東にある赤く輝いている星が火星、あとは順に土星、さそり座のアンタレス、木星である。

 火星は7月31日に5759万キロまで近づく。近づくにつれて輝きが増していて-2.5等星の明るさをすでに超えた。ピークは-2.8等星の明るさになる。星空でも明るい方だ。

 火星は地球と同じく、太陽の周りを回っている。地球のすぐ外側を回っているので、地球からの距離は、最大ではいまより5倍も遠くなる。

 火星では、一見、高等生物が作ったような「運河」が過去の大接近のときに発見された。また、かつて「火星人」の存在さえ想像されていた。

 じつは火星も金星も地球も、同じ46億年前に小さな星屑が集まって作られた。星屑は秒速数キロ以上という大変な速さで次々に衝突してきたので、表面の温度が上がって岩が溶け、マグマが表面全体をおおう「マグマオーシャン」になった。星屑に含まれていた氷や水は蒸発して厚い雲になって上空に漂った。

 その後、星屑が惑星に吸着されてなくなるにつれて温度が下がり、何百年も雨が降り続いて、それぞれの惑星に、初めて海が出来た。そこまでは三つの兄弟の星は同じ歴史をたどった。

 しかし、その後の進路が運命を分けた。火星は地球より1.5倍も太陽から遠いので太陽の熱を受けることが少なく、他方、大きさが地球の半分しかない。このため地球よりもずっと早く冷えてしまって、いまは二酸化炭素が凍ってドライアイスになるほどの低温になってしまっている。

 それゆえ、一時は生命があったとしても原始的な生物だけだということが分かった。

 一方、地球よりも太陽に近い金星の表面温度は500℃。海は蒸発してしまった。生物は住めない。太陽からの距離と大きさが兄弟の運命を分けたのだ。

 火星は太陽系の惑星のうちでは地球に環境が似ている。だが近年の科学は、もっと環境が似ている星に関心が移った。

 最近の話題は、太陽系外の生命体を探すためにいちばん期待されている星が見つかったことだ。40光年先にある太陽系外惑星「LHS 1140b」が生命存在に望ましいとされる「生命居住可能領域」にあることが分かった。つまり地球と同じ温度と水の存在だ。

 LHS 1140bが誕生したのは約50億年前、地球より約5億年早く形成された。もし生物が生まれていれば、地球よりもずっと進化した高等生物がいても不思議ではない。

 この星は土星や木星のようにガスでできた惑星ではなく、高密度の鉄の核を持つ岩石質だろうと考えられている。直径は地球の約1.4倍で、質量は地球の7倍前後だ。

 地球より5億年古いと、プレートは地球のように動きまわらなくなって、地震や火山噴火を起こさなくなっているのだろうか。

 いままでに確認されている太陽系外の惑星は3475個ある。だが「生命居住可能領域」にある惑星はほんの一握りしか見つかっていない。

 さて、地球外生命は見つかるのだろうか。

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