島村英紀『夕刊フジ』 2018年11月23日(金曜)。4面。コラムその275「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

高等生物がいるかもしれない太陽系外惑星
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「“高等生物”がいるかもしれない太陽系外惑星」

 10月の末に、NASAのケプラー探査機が役目を終えた。10年近く観測してきたが燃料が尽きたのだ。

 この探査機は太陽系外の惑星探査で多くの業績をあげてきた。なかでも、太陽系の外にある恒星の多くは、その周囲を回る惑星があること、そのうち約5分の1が地球に似た大きさや軌道をもつことが分かった。

つまり惑星は恒星が作られたときのよくある産物だということを、ケプラー探査機のおかげで分かったのだ。

 なぜ「太陽系外惑星」が研究の焦点になっているのだろう。それは私たち人類のような高度の生物が太陽の一惑星、地球だけにたまたま生まれたのだろうかという根元的な疑問に答えるためだ。

 かつては地球上の生命は特別な偶然が揃ってはじめて出来たと思われていた。しかし現在では、水があり、温度も地球のようなところでは生物が生まれることが分かってきている。つまり、地球上の生物は、生まれるべくして生まれたものだということになった。

 だとすれば、この広い宇宙に地球のような惑星があって地球とは別に生命が生まれたとしても不思議ではない。はじめは原始的な生物でも、時間がたてば進化して高等生物が生まれる可能性も否定できないのだ。

 ケプラー探査機の寿命は尽きたが、太陽系外惑星の研究が終わったわけではない。地球上からの観測は大気に邪魔されて不可能だが、探査機や人工衛星を使った研究は続けられている。

 米国・カーネギー研究所などの研究チームはこの11月、地球から6光年の位置に、生命があるかも知れない地球型惑星を発見したと発表した。太陽に近い恒星「バーナード星」を周回しているという。

 これまでに見つかった太陽系外惑星の中では、恒星「プロキシマ・ケンタウリ」を周回する惑星の4.2光年に次ぎ、2番目に地球に近い。

 その後、プロキシマ・ケンタウリが2017年に巨大な爆発を起こしてフレアを出したことが観測された。太陽で起きた最大のフレアよりも10倍も大きなものだ。フレアとは星の磁場が急激に変化して電子を加速することで起きる。電子はプラズマガスと衝突し、エックス線から電波までの広い波長域にわたって爆発を起こすのだ。

 プロキシマ・ケンタウリは、出来てから今回観測されたようなフレアが何度も起きたと考えられるようになった。恒星のフレアによって、惑星に大気や海があったとしても蒸発してしまった可能性が大きい。

 このため、今回のバーナード星の惑星が、生命が存在する可能性がある、もっとも近い太陽系外惑星になったわけだ。

 6光年といっても、光の速度で6年分だ。現在の宇宙船技術では到達するのに約5万年かかる。だが宇宙物理学者の故ホーキング博士らは、光速の5分の1の速さで飛行し、この恒星系に30年程度で到達できる超小型探査機を開発する計画を発表した。

 「近い未来」に私たちが見たこともない高等生物に遭遇することになるのだろうか。

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