島村英紀『夕刊フジ』 2019年3月8日(金曜)。4面。コラムその289「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

中国でも”人造地震”騒ぎ 「水圧破砕法」米国では禁止も日本に規制なし
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「中国でも“人造地震”騒ぎ… 「水圧破砕法」仏など禁止も日本には規制なし 」

 先週から、中国・四川省で騒ぎが大きくなっている。数千人の市民が県庁前に集まって門を押し倒した。

 これはシェールガスの採取にともなって地震が発生したことに抗議したものだ。この騒ぎを受けて地元政府が採掘を停止する事態になった。

 四川省は中国のシェール産業の中心地だ。四川省では以前から、シェールガスの採掘によって地震が相次いで起きてきた。今回起きた地震は、2018年9月から始まった採掘孔井の近くでM4.7とM4.9だった。地震で少なくとも2人が死亡したほか、家屋数千軒が損壊して、数百人が家を失った。

 じつはシェールガスの採取にともなって地震が起きることは世界中で経験されている。

 いちばん目立つのはシェールガス採取を最初に始めた「先進国」米国だ。人為的地震が増えたせいで、いままで地震がなかった南部のオクラホマ州が地震数全米一に躍り出てしまった。いま米国で人為的地震の危険が多い州は、危険度の高い順にオクラホマ、カンザス、テキサス、コロラド、ニューメキシコ、アーカンソーの各州だ。

 いずれも自然地震はほとんど起きなかったところだ。地震学の教科書には「米国では西岸のカリフォルニア州と北部のアラスカ州だけに地震が起きる」と書いてある。

 オクラホマ州では2011年に起きたM5.6の地震で家が壊れ、煙突が倒れるなどの被害が出た。

 米国や中国に限らず、もっとずっと大きな地震が起きるかもしれない。

 シェールガスは、「水圧破砕法」を使って取り出す。この手法は水、化学薬品、砂を混合した液体を高圧で地下へ注入して石油やガスを取り出す方法である。

 注入した液体が石油やガスを地表へ押し上げる仕組みだ。

 注入する液体にどのような成分が調合されているのかは分からない。亀裂が塞がらないようにプロパントという微細な砂粒が混入され、砂粒の流れをスムーズにする摩擦減少剤、界面活性剤、腐食防止剤、スケール防止剤、バクテリア殺菌剤、酸類などが入っている。

 だが、どのような成分が調合されているのかは企業秘密で、シェールガス開発業者によっても異なる。この成分の中には有毒なものもある。

 水圧破砕法が引き起こす地震には、高圧で地下へ液体を注入して地震を起こす直接的なものだけではない。作業で排出される大量の廃水は再び地中に高圧で戻されるので、さらに奥深くにある岩盤の断層を滑りやすくしてしまうのだ。

 これらのため、フランスやメキシコなどいくつかの国や、米国ニューヨーク州などでは水圧破砕法が禁止になっている。

 日本ではまだ規制がない。水圧破砕法がシェールガスの試験採掘に使われ始めているほか、これから地熱開発にも使われる可能性が大きい。

 さて、世界で問題を起こしている水圧破砕法が日本でも問題を起こすのだろうか。

この記事
このシリーズの一覧


島村英紀・科学論文以外の発表著作リストに戻る
島村英紀が書いた「地球と生き物の不思議な関係」へ
島村英紀が書いた「日本と日本以外」
島村英紀が書いた「もののあわれ」
本文目次に戻る
テーマ別エッセイ索引へ
「硬・軟」別エッセイ索引へ



SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送