島村英紀『夕刊フジ』 2013年12月27日(金曜)。5面。コラムその33 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

大噴火は今世紀5〜6回起きる?
(『夕刊フジ』の公式サイトでのサブ見出しは) 休止期間が長かった後は大噴火に…

 今年は火山の当たり年だと思っている人も多いだろう。11月から噴火を続けている西之島の新島も、すでに8月に今年だけの通算で500回目の噴火をした鹿児島の桜島も大きなニュースになったからである。

 だが、これは間違いだ。日本の火山はこのところ「静かすぎる」のである。

 19世紀まで「大噴火」がそれぞれの世紀に4回以上起きていた。ここで大噴火とは東京ドームの250杯分、3億立方メートル以上の火山灰や熔岩が出てきた噴火をいう。

 ところが20世紀に入ってからは大噴火は1914年の桜島の大正噴火と1929年の北海道駒ケ岳の噴火の2回だけだった。それ以後現在まで100年近くは大噴火はゼロなのである。

 海溝型地震というものが同じようなものが「忘れたころに」くり返すのとちがって、火山噴火の繰り返しは時間も噴火の規模や様式もまちまちだ。その意味では、ある火山が100年以上静かなことは世界的にもそれほど珍しいことではない。

 大地震はプレートの動きに応じて溜まっていく歪みの解放によって起きる。いわば原因と結果が直接に結びついている。

 だが噴火はプレートが動くことによってマグマは地下で次々に生まれているが、上がってくるまでにいくつかの「マグマ溜まり」を作ったり、マグマの成分が変化していったりする複雑な過程をたどる。それゆえ海溝型地震のように単純な繰り返しがあるわけではないのである。

 じつは数千年以上という長い期間で見ると、「カルデラ噴火」というとてつもなく大規模な噴火が日本を何回も襲った。たとえば7300年前の鬼界(きかい)カルデラ噴火だ。放出されたマグマはなんと東京ドーム10万杯分にもなった。鬼界カルデラにある硫黄島は薩摩半島の沖合50キロにあるが、火山灰は関西では20センチ、関東地方でさえ10センチも降り積もった。

 ところで恐ろしい統計がある。米国の研究者が最近200年間に起きた世界の爆発的な大噴火15例を調べたら、そのうち11例もがそれぞれの火山で「史上初」の噴火だったことである。

 ここで史上初というのには注釈がいる。火山のように世界のあちこちで起きる事件では、日本は別にして、ヨーロッパ人が入りこんでからしか正確には記録されていないことが多い。つまり大航海時代以来の「史上初」ということなのだ。せいぜい300 - 400年の静穏期以後の大噴火は「史上初」になってしまうのである。

 いずれにせよ、この統計が意味していることは、休止期間が長かった後で噴火するときには大噴火になりやすいということだ。

 さて、この300年間は噴火していない富士山はどうなのだろう。

 富士山にはかぎらない。カルデラ噴火は数千年に一度だとしても、「大噴火」が21世紀には少なくとも5〜6回は起きても不思議ではないと考えている地球物理学者は多いのである。

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