島村英紀『夕刊フジ』 2020年10月2日(金曜)。4面。コラムその367「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

星の明るさが変わる?謎の現象
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「星の明るさが変わる?謎の現象 異例の減光「ベテルギウス」

 最もめだつ冬の星座、オリオン座の左上に輝いている1等星ベテルギウスが、再び急速に暗くなっている。いったん明るさを取り戻したが、ここ数カ月で再び暗くなっているのだ。

 もともと、ベテルギウスは「脈動する半規則型変光星」だ。変光星として、5.9年と14カ月の二つの周期がある。


 だが、今回の減光はいずれの周期ともずれていて、異例のことだ。2019年末頃からベテルギウスは大きく減光し始め、2020年1月までにベテルギウスの視等級は0.5等級から1.5等級へと約2.5倍暗くなり、1月30日には2等星にまで暗くなった。この減光でベテルギウスは明るく見える恒星の上位10位以内から20位以下にまで落ちた。近くのおうし座のアルデバラン(0.86等級)よりも暗くなってしまったのだ。


 この減光の原因には諸説がある。「ベテルギウス自身が放出した塵」が地球への光を遮ったか、または「表面に生じた黒点」などの説である。いまのところは前者の説が有力だ。


 この説はベテルギウスから出たプラズマが冷えたことで数百万キロほど離れた塵の雲ができ、ベテルギウスがその雲に隠されて減光が観測されたというわけだ。


 しかし、この説をとるにしてもナゾは残る。この活動ではベテルギウスの通常の2倍に相当する質量の塵が、しかも南半球だけで放出された異例なものだった。ベテルギウスは太陽の3000万倍のペースで質量を失っているのもナゾだ。


 冬の星座オリオン座は、いまは昼間の空に昇っている、だから地球からの観測は難しい。この冬にさらに何が起きるか、注目が集まっている。


 ベテルギウスより、もっと訳の分からない減光もある。減光の形もタイミングも奇妙なことだらけなのだ。


 恒星「KIC 8462852」。太陽よりも大きいが3等級の暗い星だ。地球からベテルギウスの約倍の1465光年離れている。


 ここで、説明がつかない異常現象が観測された。まるで星の外側に何か障害物があって星が発する光を遮断しているようなのだ。


 それは明るさの変化が1週間から数カ月という早い周期のことや、暗くなり方の程度だ。光が落ちる様子から見ると、ベテルギウスのように塵や別の星に遮られているのとは明らかに違う。


 いままでの天文物理学では到底説明がつかない。科学者は、この星の「人工的な」変化を見て首をひねっている。


 このため2つの説があるが、いずれも難点がある。彗星の大群がこの星を襲っている説と、地球ではまだ発見されていない何らかの銀河間現象が起きているという2つの説である。


 それゆえ第3の説がある。高度の文明を持つ地球外生命体が、惑星に住みながら恒星をおおう規模の巨大な構造物を建造しているのではないかという説だ。巨大な建造物としては、地球でいう太陽電池であろう。無尽蔵のエネルギー源である。


 さて、高度な文明を持つ「宇宙人」は本当にいるのだろうか。もし高等生物がいれば、大地震や大噴火も克服しているにちがいない。

 
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