島村英紀『夕刊フジ』 2023年1月6日(金曜)。4面。コラムその475「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 



地球上の生命が滅びるまで、あとどのくらい?

 

夕刊フジ』公式ホームページの題は「地球上の生命が滅びるまで、あとどのくらい? 残されている時間は…運命は誕生する前≠ゥら決まっている」 

 地球自体にはまだ50億年ほど時間が残されているが、地球で生きる私たちに残された時間はずっと短いことが、最近わかった。

 今後の1000年間でイタリア・べスビオ山は約40回以上も噴火すると予測されているし、2011年の東日本震災なみのマグニチュード(M)9の地震が世界で約50回発生する。米国ハワイのマウナロア山が約200回ほどの噴火をするに違いない。米国ナイアガラの滝は上流への移動を継続し、3万〜5万年後にはニューヨーク州に到達する。プレートテクトニクスではプレートが年間数センチで移動する。このプレートの動きは今後の11億年間にわたって継続すると予想され、プレートの移動と衝突、それが引き起こす地震や噴火も続くだろう。プレートテクトニクスはこの先に止まるという説もあり、諸説が分かれる。


 しかし、今回の話題はずっと先の話だ。


 じつは10億年後には地球上のあらゆる生命が死滅する。


 太陽はこれまでも、これからも、少しずつ明るくなってきている。


 こうして増し続ける輝きが、地球の生物をこの世から消し去る。なぜなら太陽の輝きの増加は、そのまま地上の温度上昇につながるからだ。海はすべて蒸発してしまう。


 海水が大量に蒸発するようになると、大気は水蒸気で満たされ、水蒸気の温室効果が暴走しはじめる。海が蒸発をはじめて水蒸気が地球を熱くすると、いっそう海が蒸発する。最後は、地球のどんな生命も耐えられないほど高温になる。これが私たち地球の生命の終わりだ。


 太陽がいまの姿ではなく巨大な赤色巨星になるのだ。巨大な赤色巨星は地球よりも内側を回る水星や金星はおろか、地球まで飲み込んでしまうほどの大きさになる。


 では、その地球の生物には、あとどのくらい時間が残されているのだろうか?


  残念ながら、私たちにはあと10億年ほどしか残されていない。多少の不確実性はあり、あと15億年と推定した別の研究もある。



 世界はそのエネルギーを太陽に依存している。地球の運命は、地球が誕生する前からもう決まっているわけだ。


 太陽は水素の原子核が押し出され、核融合してヘリウムなどになる。


 燃料を燃やせば、やがて燃え尽きる。まだ太陽にはたくさんの水素と核融合を起こせるだけの圧力と温度がある。


 だが今から50億年もたったころには、太陽の水素は枯渇し、もはや不活性なヘリウムしか残っていない。

 太陽をはじめ地球など惑星からなる太陽系ができた当初は太陽の光度は現在の70%に過ぎなかった。太陽の光度は1億1000万年毎に1%のペースでほぼ直線的に増加している。

 30億年後の太陽光度は現在よりも33%増え、さらに50億年後に水素が使い果たされる直前には、太陽の光度は現在より67%も増加する見込みだ。


 いま私たち地球上の生物には10億年しか残されていないことがわかった。


 地球は生物のいない星になるのであろう、

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