島村英紀『夕刊フジ』 2023年4月14日(金曜)。4面。コラムその488「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

温暖化で増え続ける竜巻被害

『夕刊フジ』公式ホームページの題は「温暖化で増え続ける竜巻被害 全米中を暴れまわる異常気象 ほとんどなかった豪雨や竜巻が日本でも」

 全米中を異常気象が暴れまわっている。その典型は竜巻だ。

 最初の竜巻は3月24日夜に米国南部・ミシシッピ、ルイジアナ両州の州境付近で発生した。ミシシッピ州を北西方向に横断しながら約100キロにわたって家屋の倒壊などを引き起こした。アラバマ州に近づいて再び勢いを増して、同州でも甚大な被害を起こした。

 この竜巻で26人が死亡した。死者の数はさらに増える可能性がある。家は一つも残っていないというのが住民の声だ。

 同31日も米南部や中西部などで荒天に見舞われ、各地で竜巻が起きるなどした。

 特に被害が大きいのは南部テネシー州で、南部アーカンソー州、中西部インディアナ州でも複数の死者が出た。中西部イリノイ州ではコンサート中の会場の屋根が崩落し、1人が死亡、約40人がけがをした。会場には200人以上がいたという。この日は米国東部も雷雨や強風に見舞われ、荒天は10日間ほど続くと予想されていた。

 続いて、今月5日未明にも米中西部ミズーリ州でも巨大竜巻が発生し、少なくとも5人が死亡した。過去2週間で累計死者数は63人に上った。

 地球温暖化の結果として、世界各地で「気象が凶暴化」する。台風やハリケーンがより強くなる。

 今回の竜巻は、西からの強く冷たい風と、メキシコ湾側から吹き込む暖かく湿った南風がぶつかったためだと思われている。竜巻は時速100キロ以上で走り抜けた。

 しかし日本でも、いままでにはほとんどなかった豪雨や竜巻が増えてきている。

 竜巻の被害は日本でも増えている。日本各地で増えているが、2006年11月に北海道常呂(ところ)郡・佐呂間(さろま)町で、日本の竜巻による被害では戦後最悪の死者数9を記録した。国道のトンネルの工事をしていた作業員用のプレハブ小屋が竜巻に巻き込まれたもので、作業員の多くが会議のためにプレハブ小屋のひとつの部屋に集まっていたのが不幸だった。

 普通の風速には十分耐えるはずのプレハブ小屋が簡単に飛ばされるのは異例だ。ある研究によれば、瞬間風速が毎秒83メートルに達したという。この風速ではプレハブはもちろん、普通の建物でも到底もつまい。

 現場では、大型トラックが簡単に吹き飛ばされたり、まだ新しい家の屋根が吹き飛んだり、電柱も根元から倒れて吹き飛ばされて被害のすさまじさを物語っていた。飛散したものは10キロ以上離れた地域にも多く落下した。

 一方で、住宅地にも甚大な被害が出たのに、住民の被害は怪我人が9人出ただけだった。これは竜巻の当時、住民の多くが近所で行われた葬式に参加して家を留守にしていたためだ。

 日本付近の海水温が上がったためにいろいろな影響が出る。

 例えば台風が海水からもらって成長するエネルギーが大きくなる。台風が日本に近づいても今までと違って弱まらず、なお大きくなっている。

 これからも地球温暖化に伴って、豪雨、.竜巻、強風などの気象災害は世界各地で増えていくに違いない。
 
この記事
  このシリーズの一覧


島村英紀・科学論文以外の発表著作リストに戻る
島村英紀が書いた「地球と生き物の不思議な関係」へ
島村英紀が書いた「日本と日本以外」
島村英紀が書いた「もののあわれ」
本文目次に戻る
テーマ別エッセイ索引へ
「硬・軟」別エッセイ索引へ