島村英紀『夕刊フジ』 2013年6月21日(金曜)。5面。コラムその7:「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

「人造地震」の恐怖4 「中越沖」「中越沖」の震央近くで二つの作業
『夕刊フジ』のウェブ版でのこの記事のタイトルは「人造地震」の恐怖4 「中越」「中越沖」ガス田での作業が地震誘発か”

 世界各地で行っている開発や生産活動が、知らないあいだに地震の引き金を引いてしまうことがあることを話してきた。

 このため国際的な地震学会では、こういった「誘発地震」が独立したセッションになっているのが普通だ。また研究書も刊行されている。

 世界各地に起きていて、日本だけ起きないという理由はあるまい。しかし国際的にも地震学の高い研究レベルを誇り、地震学者の数も世界最多である日本での研究は進んでいない。

 それには二つの理由がある。ひとつはもともと地震活動が盛んなところなので、起きた地震が自然に起きたものか、誘発地震かを見分けることがむつかしいことである。

 もうひとつは政府や電力会社が、この方面の研究を好まないことだ。

 このため日本では研究者がほとんどいなくて、研究も行われていない。

 日本の地震学者たちが使っている研究費のほとんどは政府から来る金、つまり国費で、残りのわずかも、電力会社や損保会社から来ていることも関係している。

 じつは電力会社がそれぞれのダムに設置している地震計のデータも非公開なのである。

 ある国立研究所に属する地震学者がダムが起こす地震をテーマにして学会発表しようとしたことがある。

 ところが、事前に発表の内容を役所に見せるように言われた。発表を事前にチェックされるのは異例のことだ。そのうえ学会まで、お役人が発表を見に来たのであった。

 ところで、新潟県中越地震(2004年)のときには、震央から約20キロ、新潟県中越沖地震(2007年)のときにも反対側にやはり20キロしか離れていないところに「南長岡ガス田」(新潟県長岡市)があり、地下4500メートルのところに高圧の水を注入して岩を破砕していた。

 新潟県中越地震はマグニチュード(M)6.8で68名の死者を生み、中越沖地震もM6.8で死者15名だった。

 このガス田は1984年に生産を開始していたが、21世紀になってから「水圧破砕法」を使いはじめていたのだった。この水圧破砕法によって、ここではガスの生産を8倍にも増やすことに成功したといわれている。

 それだけではなかった。ここでは、地球温暖化で問題になっている二酸化炭素を液体にして、地下深部に圧入する実験も行われていた。地下約1100メートルに一日20トンから40トン、合計で10000トン以上という大量の二酸化炭素を地中に圧入する実験だった。

 新潟県中越地震と新潟県中越地震、これらの二つの震源に極めて近いところでふたつの「作業」をしていたことになる。

 いまの学問ではこのガス田での作業が地震を引き起こしたという明確な証拠はない。しかし、まったく関係がなかったということも、もちろん証明できないのである。

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