島村英紀『夕刊フジ』 2015年4月24日(金曜)。5面。コラムその99 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

頻度高まる隕石の衝突
『夕刊フジ』の公式ホームページでの題は「頻度高まる隕石の地球衝突 広島に投下された原爆を超えるエネルギーも」

 中国で生まれて日本に入ってきた言葉がある。「杞憂(きゆう)」。中国古代の杞の人が天が落ちてきはしないかと毎日心配して、食事ものどを通らなかったことから出来た言葉だ。

 
心配する必要のないことをあれこれ心配することや、取り越し苦労のことを言う言葉だとされている。

 しかし、現代の私たちにとっては笑い話ではすまないことが分かってきた。

 2000年から2013年の間に26個の大きな隕石が落ちてきた。この26個が地球に衝突したときのエネルギーは、TNT火薬にしてどれも1000トンから60万トンの威力があった。

 ちなみに米国が広島に投下した原子爆弾は16000トン相当だったから、どれも相当な威力だった。もし都市を直撃したら大変なことになる大きさである。

 火薬1000トン相当以上のものが14 年間に26回。広島規模以上の隕石の爆発だけでも、平均すると年1回以上も起きているのだ。

 しかし幸いにして、いままで人が密集しているところに落ちたことはない。これは偶然の幸運のおかげだった。地球の表面の3分の2は海であるうえ、陸地の多くの部分も人はほとんど住んでいないところだから、密集地に落ちる確率はそもそも低いのだ。

 しかし、今後はわからない。この幸運がいつまで続くのか、そのうちにどこかの都市に隕石が落ちて悲劇的な大惨事になってしまうのかは神のみぞ知ることなのである。

 最近の調査では、巨大な隕石が地球に衝突する頻度は、これまで考えられていたよりもずっと高いということが分かってきている。

 最近では2013年2月にロシア西南部の町チェリャビンスクに大きな隕石が落ちた。

 この隕石は50万トン分、つまり広島に落とされた原爆の30倍ものエネルギーを放出した。衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物が壊れ、1500人もが重軽傷を負った。

 その前2008年10月にはアフリカ・スーダンの無人のヌビア砂漠上空にも大きな隕石が落ちてきた。落ちてきたものは直径約4メートル、重さ約59トンの小惑星だった。幸いこのときはこの小惑星のほとんどは地上に落ちる前に成層圏で爆発して燃え尽き、ごく一部が隕石として地上に落ちてきた。1400キロメートルも離れたところを飛んでいたジェット機の乗員が激しい閃光を目撃している。

 科学者は手をこまぬいているわけではない。このスーダンに落ちた隕石は、大気圏と衝突する20時間前に発見され、史上初の「衝突前に発見された天体」になった。

 だが、チェリャビンスクに衝突した隕石は事前に発見できなかった。

 これからも大きな隕石は地球に落ち続けるに違いない。だがチェリャビンスクの例のように、かならず事前に分かるわけではない。

 もっとも、事前に分かったとしても落下場所が正確に分かるわけではない。対処のしようもないのだが・・。

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