今月の写真
パンダは悲しからずや


久しぶりに東京・上野動物園に行った。一時ほどの人気はないが、二匹のパンダがいるパンダ舎には、かなりの見物客が集まっていた。ほかの動物舎とちがって整理員が配置され、カメラのストロボを発光させる客がいないか、長く居続けて次の客に迷惑がかかる客がいないか、監視している。また隣では、新しいパンダの屋外展示場が工事中だった。

しかし、肝心のパンダは、写真のように丸い背中を客に向けたまま、向こうを向いたままだ。ふてくされているようにも見える。

中国・四川省で仲間と暮らしていたのに、中国政府の政治的な駆け引きの道具(と金稼ぎ)のために異国に暮らすことになった。しかも、一緒にいるのは一匹の異性だけ。そいつと気が合おうが合うまいが、繁殖のためだけに組み合わされてしまった相手と二匹だけで暮らさねばならない。エサだけは十分にあるものの、四六時中、見物客の喧噪にわずらわされ、好奇の眼に曝される。

つまり、故郷で家族や仲間と暮らしていたような楽しいことは、ここではないのだ。ふてくされるのもむべなるかな、である。

パンダは悲しからずや。

ところで四川省といって私たち地球物理学者が思い出すのは2008年5月12日に起きた四川大地震だ。10万人以上の死者行方不明者が出てしまった。

地震は、プレートが押し合いをしていることによって、プレートのどこかが、ゆがんだりねじれたりして起きるものだ。中国はユーラシアプレートという大きなプレートに載っている国で、日本とちがって、プレートの押し合いがすぐ近くにあるわけではない。ユーラシアプレートはヨーロッパからアジアまで続いているプレートである。

だが中国では昔から直下型地震がよく起きて、何回もたいへんな被害を生んできた。死者数が1万人を超える地震だけでも、16世紀以来、2008年の地震を入れて14回も起きた。プレートの押し合いは中国の外で起きているのに、中国が載っている部分もゆがんだりねじれたりして、中国の直下で地震が起きてしまうせいなのである。

インドを載せたインドプレートは、もともとは南極大陸と一体のものだったが、別れて北上し、少なくとも7000万年前からユーラシアプレートに近づいて来た。そして4000万年前には衝突し、その後も北上を続けている。このためヒマラヤ山脈が盛り上がった。それだけではなく、そのプレートの衝突が、中国が載っているプレートをゆがめて、2008年の四川大地震(マグニチュード8.0)が起きてしまったのだ。

インドの衝突が起こした地震は、今回の四川大地震だけではない。2005年10月に起きたパキスタン大地震(マグニチュード7.8)も、同じメカニズムで起きて、死者9万人以上、家を失った人が250万人以上というたいへんな被害を生んでしまった。パキスタン大地震は山岳地帯だっために、救難は困難を極めた。

逆三角形のインドプレートの北東端に押されているのが四川省や雲南省、北西端に押されているのがパキスタンというわけだ。インドプレートの衝突のせいで、インドの北西部でパキスタン大地震が、そして北東部で四川大地震が起きたというわけなのだ。

(東京・上野動物園で2014年9月に撮影。撮影機材はPanasonic DMC-G2。手前に写っているのは、ほとんど食べ尽くした餌の笹)


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