『日本経済新聞』(1993年12月5日)書評
地震から地球のぞく楽しさ

 「声なき声を聞け」という言葉がある。政治家が心がけなければならないこととされている。同じようにサイレント・マジョリテイー(声無き多数派)もしばしば聞く。「サイレント(沈黙)」という語は、何か得体(えたい)の知れぬ力を持っているように思う。サイレント・アースクェイク(沈黙の地震)にも、そんな目に見えぬ力を感じる。

 地震の99%はぐらぐらっとくるタイプだが、残りの1%は我々の体はおろか、最新鋭の地震計も捕らえられないものだ。これがサイレント・ア−スクェイク。普通の地震では震源の運動がたかだか1-2分しか統かないのに対し、”沈黙タイプ”は一日以上続く。時には数ヶ月、数年におよぶ非常にゆっくりしたものもあるらしい。地震計もキャッチできないのだから、その正体はほとんど分かつていない。

 人間の社会でサイレント・マジョリティーが行動を起こしたら、きっと世の中が変わるだろう。同じように、地震の世界でサイレント・アースクェイクのことがわかると、地震学や地震予知研究が飛躍的に発展するかもしれない、といった期待を抱かせる。

 ー本書は東大に学んだ師弟が分担執筆したものである。無理に書き方をそろえようとせず、地震発生の理論を真っ正面から取り上げた章があると思えぱ、苦心さんたんして海底地震計を作り上けた話を紹介した章があるなど、硬い本にしては飽きさせない。

 「地震は生きている地球をのぞく窓」と言われる。言い方は悪いが、地震学者は地震を追い詰めているようなそぶりをしながら、実は地震を手掛かりに地球の成り立ちや営みを探ることを楽しんでいるような気がする。

 しかし、彼らを責めてはいけない。本書を読めば地球がいかに一筋縄ではいかない相手であるかがわかる。地震学者に存分に研究を楽しんでもらい、サイレント・アースクェイクを”冗舌”にしてくれることを願ったほうがいい。

(東京大学出版会・2884円)
編集委員・中村雅美

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