『魚眼図』(北海道新聞・文化面)、1997年1月13日夕刊〔No.231〕

官庁から見た辞職、本人から見た栄転
(原題は
ある「辞職」”


 いろいろな官庁が広報に気を遣うようになって、カラフルな資料やパンフレットを作るようになった。官庁は税金で養ってもらっているのだから、明快でわかりやすい広報に努力することは悪いことではない。

 北大も例外ではなく、学内広報が表紙だけはカラーになっている。以前のものよりは内容に工夫しているのが見て取れる。しかし外国の大学が出しているあか抜けた広報に比べれば、まだあちこちにお役所の報告風のところが残っている。

 先日、私のところの助手が官庁関連の特殊法人の研究所に転勤した。研究者のポストからいえば栄転である。

 人事のことだから学内広報に載る。昇任や転任の場合には、行先の大学や研究所と肩書きが書いてあるのが普通だ。

 ところが、彼の欄には「辞職」としか書いていない。あとは空欄になっている。知らない人が見たら、不始末でもして辞職したのかしら、どこにも行先がなかったのかね、とも勘ぐられかねない記述なのである。

 これには説明がいるだろう。官庁にとってはたとえ本人にとって栄転でも、官庁以外に行くことは「辞職」だからである。

 これは官庁側から見た立場なのである。そして、官庁どうしなら普通に書く行先を、たとえ同じ研究を続けるとしても、行先が官庁でなければ書かない。これは官尊民卑といわれても仕方がないのではないだろうか。

 官庁の特殊法人にも理化学研究所のように日本の科学を背負ってきた伝統ある研究所もある。これらにかぎらず、たとえ私立大学へ栄転するときでも、行先はやはり空欄なのである。

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