『花時計』(読売新聞・道内社会面)、1996年1月6日夕刊〔No.46〕

大学のネーミング


 大学には多くの学問の種類がある。物理学とか医学とか考古学とかいった学問の名前は、どんなことを研究したり教育しているのか、他の人にわかるための看板の役目を果たしてきた。学部にも、講座や研究室にもそれぞれの学問の名前がつけられて看板の役を果たしている。

 ところが、最近の北大では、なんともわからない看板が増えてきている。たとえば地球惑星物質圏科学、地球惑星流体科学、地球惑星変動学といった看板だ。何を研究しているのかおわかりだろうか。じつは私たち学内の者にとってさえわからない。地質学とか地球物理学という、昔から名の通っている看板を捨てて、こういったわかりにくい名前に改称することがはやっている。

 大学院改革という、旧制帝大を中心とする組織替えのために、いままでの講座をいくつか集めて大きな単位の「大講座」を作っている。その大講座につけた新しい看板がこれらの名前なのである。1年生から4年生までの学生よりも、大学院生の教育に重点を置こうという北大の転換の一環として、こういったエラそうな看板への掛け替えが、北大全体で行われているのである。

 新しい名前はワープロも惑わす。私のワープロでは地球惑星物質喧嘩学!になってしまった。物質圏科学のことだ。

 世はイメージの時代。子供が減る時代に生き残りを図る大学もまた例外ではない。ネーミングをちょっと変えただけで受験生が殺到した大学もある。大学の名前の頭に神戸をつけただけの神戸S女子大だ。

 一方、私たちは、こんなエラそうだけれどもわかりにくい名前ばかりにしてしまっていいのだろうか。若者にとってもわかりやすくて魅力的な看板を掲げなければ、そもそも世間知らずの体質が抜きがたい北大だけに、将来が心配されるのである。

紙面では500字という字数制限がありましたので、紙面に出せなくて削ったものを復活してあります。)

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