一時は原油枯渇の救世主としてもてはやされていたシェールオイルは、このところ逆境にある。
シェールオイルとは泥や土が堆積(たいせき)してできた頁岩(けつがん。英語ではシェール)層に含まれる原油だ。頁岩層は地下数百〜数千メートルにある。超高圧の水や酸や化学薬品を注入して頁岩層に亀裂を入れ、原油などを取り出す「水圧破砕法」と呼ばれる手法が今世紀に入って確立されて採掘が加速していた。
トップを走っていた米国では2011年にシェールオイルの生産量が日産120万バレルだったが、2014年には450万バレルと急拡大した。(註)
だが米国内務省はこの3月に連邦政府の土地でシェールガスやシェールオイルを採掘する企業に対し、地中に高圧をかけて注入する水に含まれる化学物質の開示などを求める新規制を発表した。水圧破砕法が地下水や土壌を汚染するのを防ぐねらいである。かねてから環境保護団体が、環境に悪影響を与えると訴えていた。
そのほか水圧破砕法によって近隣住民の入院率が高まり、がんの発症リスクも増加するという研究を米国ペンシルバニア大学などのチームが科学誌に掲載した。この7月のことだ。
ニューヨーク州では水圧破砕法を事実上禁止する方針だという。これも環境汚染への懸念からだ。米国バーモント州や欧州の一部諸国ではすでに禁止されている。
ところで原油価格が世界的に急落したことで、シェールオイル・ガスの掘削がコスト割れしてブームが急速に下火になった。北米で稼働中の掘削装置の数は約650基で、1600基を超えていた2014年10月のピーク時から6割も減った。
伊藤忠商事も6月に、米国でのシェールガス事業から撤退した。日本の大手商社がシェールオイル・ガス事業から撤退するのは初めてである。
それだけではない。先週、カナダのブリティッシュコロンビア州原油・ガス委員会(石油・ガスの規制当局)は昨年8月にカナダで起きていたマグニチュード(M)4.4の地震が、水圧破砕法が引き金となって起きたものだと断定したことが報じられた。
この地震は水圧破砕法による地震としては世界最大級である。震源の近くだとかなりの被害を生じかねない大きさの地震だ。将来、もっと大きな地震が起きる可能性もある。そもそもカナダは地震がほとんどない国だ。建築や土木構造物も日本のような耐震構造にはなっていない。
この地震の前、同年7月にもM3.9の地震が起きたが、この地震も水圧破砕法によって起きたと考えられている。前にこの連載で書いたように、米国各地で同じような地震が起きている。
シェールオイル・ガス採掘は踏んだり蹴ったりに見える。さて、将来のエネルギーの期待の星はどうなるのだろう。
註)1バレルは約159リットルである。
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