島村英紀『夕刊フジ』 2016年9月16日(金曜)5面。コラムその167「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

あてにならない”余震予知”
「夕刊フジ」公式ホームページの題は「あてにならない“余震予知” 熊本地震で余震の見通しの発表方式を変えた気象庁」

 余震とは、怪我をしたあとの疼(うず)きのようなものだ。本震の震源の拡がりの中で、小さめの地震が続くのが余震だ。

 しかし、「余」震だと油断してはいけない。本震で弱った建物が余震で崩壊してしまうこともある。

 一般的には、震源が浅いと余震が多い。震源が深いときは余震は少ないか、ほとんどない。

 たとえば日本で起きた被害地震のなかで震源がもっとも深かったのは奈良県で起きた吉野地震(1952年)で、震源の深さは70キロだった。この地震はマグニチュード(M)7クラスだったのに余震は 4回だけだった。

 ところで、この一般論以外には、本震が起きたあとに、どんな大きさの余震がどのくらい続くかは、いまだに学問的には解明できていない。

 ところが気象庁は従来から余震発生確率を地震発生の翌日から数字を公表してきていた。たとえば新潟県中越地震(2004年、M6.8)のときは、気象庁は「3日以内の最大震度5強以上の確率は10%」と発表していた。

 しかしこの予測を上回る震度6強という強い余震が3回もあった。気象庁の余震予測は300%も違ったと言われたものだ。

 この4月からの熊本地震では、中越地震よりもさらに多い余震が続いている。8月になってからも、震度4や3の揺れが繰り返されている。

 この熊本地震や中越地震は余震が特に多い地震だ。中越地震のときには、地震断層がひとつではなくて複雑だったし、熊本地震では日本を横断する大断層、中央構造線の上で起きた地震のためだ。

 他方、阪神淡路大震災(1995年)では、単発の直下型地震だったので、Mは熊本地震の最大地震と同じ7.3だったのに、1、2ヶ月でおさまってしまった。

 この熊本地震を受けて、気象庁は、大地震直後に発表していた余震の見通しの発表方式を大幅に変えた。従来は余震発生確率を大地震から1日ほど後に公表していたが、今後は1週間後をめどにするという。

 いままで気象庁が発表してきた余震の見通しの予想が外れることは多かった。気象庁が発表していたのは、たんに平均的な経験例にもとづいているだけだったのだ。また、あとで言質を取られない用心をしながら、余震に対する一般的な注意を呼びかけているだけだったので、気象庁が発表する余震の見通しはあてにはならないことが多かった。

 そのうえ、「3日以内の最大震度5強以上の確率は10%」といった発表は、安心情報とも受けとられかねない問題もあった。学問的にはあてにならない従来型の発表をやめたのは当然だろう。

 しかし、気象庁の新しい方式、大地震の1週間後になって初めて「ふだんよりも地震活動が50倍活発な状態」などと発表されても、人々はどうしたらいいか分かるまい。気の抜けたビールのようなものなのではないのだろうか。

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