島村英紀『夕刊フジ』 2018年11月2日(金曜)。4面。コラムその272「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」 

意外!日本は「隕石大国」
「夕刊フジ」公式ホームページの題は「意外! 日本は「隕石大国」だった」

 愛知・小牧市で9月下旬、民家の屋根に隕石(いんせき)が落ちて穴を開けた。隕石の大きさは10センチほど、重さは550グラムだった。

 私たちはふだん忘れているが、地球は宇宙に浮かんだ球で、落ちてくる隕石は防ぎようがない。いつか貴方の頭に落ちるかも知れないのだ。

 2000年から2013年の間に26個の大きな隕石が地球に落ちてきた。この大きな隕石が地球に衝突したときのエネルギーはすさまじく、TNT火薬にして最大60万トンの威力があった。

 2013年にロシア西南部・チェリャビンスクに落ちた隕石は約17メートルの大きさだった。衝撃波で東京都の面積の7倍もの範囲で4000棟以上の建物を破壊し、重軽傷者1500人を生んだ。

 小牧に落ちたような隕石が建物を直撃するのは、日本では2003年の「広島隕石」(広島市)以来15年ぶり。建物を直撃しなかったものも含めると、国内では今年2月の「長良隕石」(岐阜市)以来で、52個目になる。

 隕石は地球や惑星の起源や宇宙を知るための貴重な財産だ。

 今回は落ちてすぐ見つかった。だが、地面に落ちてしまったら、そのへんにある石と見分けるのは至難の業である。

 あまり知られていないが、日本が所有する隕石は世界有数の多さなのだ。それは、もっぱら南極の氷の上で拾い集めたからだ。一面に白い氷の上の隕石は見つけやすい。

 南極大陸には、隕石が氷河の動きとともに掃きだめのように集められるところがある。

 南極大陸に降った雪は積み重なった雪の圧力で氷になり、厚さが3000メートルを超える氷床になる。落ちた隕石はこの氷床に閉じ込められる。

 南極大陸の地形は厚い氷に覆われているために眼に見えないが、大陸は椀を伏せた形をしている。このため氷床は、大陸の中心部から周囲の海の方へ向かって、ゆっくりと滑っていく。やがて海へ落ちれば氷山になる。

 しかし大陸の縁に山脈があるところでは、山腹に沿って氷床が上がって来る。後から来る氷に押されるのだ。そこで氷はどんどん消えていく。気温は零下だが、太陽熱や、ときには毎秒100メートルにも達する南極特有の強風のせいだ。昇華(しょうか)という現象だ。

 南極大陸に落ちて氷床に閉じ込められていた隕石は、氷が消えれば顔を出す。大陸に降った雪が変転の末に山脈の脇に出て来るメカニズムは、南極の隕石を拾い集めるベルトコンベアになっているわけだ。

 こうして約1万個もの隕石が南極では見つかった。大量の隕石が見つかり出してから、世界の隕石の「主産地」は南極になった。

 なかでも日本の南極観測隊は、昭和基地がベルトコンベアの終点、「やまと山脈」に近いせいで、世界でももっとも多くの隕石を拾い集めた。日本は一躍、隕石研究大国になったのだ。

 隕石は地球上どこでも均等に降って来る。狭い日本はそれまで研究材料である隕石の少なさに泣いてきた。だが、一挙に挽回することが出来たのである。

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