島村英紀『夕刊フジ』 2023年6月16日(金曜)。4面。コラムその496「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」
水害時は都内でも高速道へ避難 都や江東5区 高速と一般道つなぐ「傾斜路」を緊急避難先に
『夕刊フジ』公式ホームページの題は「水害時は都内でも高所にある高速道へ避難 都や江東5区はほぼ全域が水没、高速と一般道つなぐ「傾斜路」を緊急避難先に」
先週、台風2号による記録的な大雨で各地で洪水や床下・床上浸水が相次いだ。これから梅雨の末期の大雨で大雨もさらに増えるかもしれない。
洪水といえば東日本大震災の津波のときには仙台市・仙台東部道路で約230人が盛土構造の道路に上って助かった。約3メートルの津波が襲って来たが、道路の高さは約7〜10メートルとずっと高かった。
岩手県釜石市でも震災時に国道45号の高架に多数の住民が駆け上がり津波から逃れた。釜石市の国道45号が、その後指定避難場所に定められ、近隣の小中学校などでは、毎年避難訓練が実施されてきた。
それ以後、国は高速道路や国道の高台を、津波や洪水時の緊急避難場所に活用する取り組みを始めた。国土交通省によると、2023年現在で35道府県で約480か所で活用を決め、2025年度までに国道で約655か所の整備を目標にしている。高速道は他の道路と交差しないよう高所に作られている例が多い。
すでに、東日本大震災の被災地である仙台市と名取市の仙台東部道路の6カ所に階段を設置しているし、岩沼市にはすでに仮設階段がある。その他、高速道の「のり面」(盛東京都東部の江東5区の住民避難のためだ。
地震時などでも、高速道は交通事故の危険性から立ち入ってはいけない。しかし自治体が新たに津波避難ビルを作るよりも費用も時間もかからないことから開放を決めた。災害が激甚・土などによって作られる人工的な斜面)などに階段を新設して避難場所にする動きが全国的に広がっている。
このように国は全国で整備していく方針だが、一方首都高速や阪神高速など大都市部の高速道路は,消防や警察、物流確保のための緊急道路としての利用を優先するため除外する方針だった。
しかし首都圏にも大きな問題がある。洪水は東日本大震災の氾濫だけで起きるのではない。都や江東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)は、たとえば大型台風の接近時にはほぼ全域が水につかり、水深が約10メートルに達する地域もある。
荒川の氾濫や台風など、大規模水害時にほぼ全域が浸水し、最大250万人が被害に襲われるかもしれない。江東5区は荒川や江戸川などが流れ、海抜0メートル地帯が広がっている。
この5区では隣県などに早めに逃れる「広域避難」の徹底を呼びかけている。だが間に合わない場合はマンション上層階などに逃げる「垂直避難」を促す考えで、高いところを通っている高速道路への避難もその一環だ。
こうした経緯から、この4月下旬に都や江東5区、高速道路各社は、高速道路と一般道をつなぐ「傾斜路」を緊急避難先に活用することで国と自治体が合意した。頻発化する中で既存の道路を活用し、全国的に不足する避難場所を確保したい狙いがあった。
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