島村英紀『夕刊フジ』 2016年2月19日(金曜)。5面。コラムその139 「警戒せよ! 生死を分ける地震の基礎知識」

台湾南部の地震は「対岸の火事」ではない----南海トラフ地震起こすプレートと同じ構図

 台湾南部で起きたマグニチュード(M)6.4の大地震から10 日あまりがたった。

 16階建てのマンションが根こそぎ横倒しになって、このマンションだけで死者114人を数えた。台湾はこの地震の日から旧正月前後の春節の休暇に入っていた。このマンションも居住者以外に家族や親戚が集まっていたので犠牲者が多かった。

 台湾はフィリピン海プレートがユーラシアプレートの下に潜り込んでいる。このため過去たびたび大地震が台湾を襲ってきた。

 1999年には台湾中部でM7.7の「集集大地震」が発生して、2400人以上が死亡した。南投県・集集鎮付近では震度7だったと思われている。

 この大地震のあと、台湾では建築基準が強化された。だが、今回倒れてしまったマンションはその強化の前、1994年に作られたものだった。

 そのうえ、建築のときの手抜きがあったのではないかと言われている。鉄筋の本数が少なかったり、コンクリートの柱の中から、多数の空き缶が出てきたりしたからだ。

 震源は台湾南部の高雄市で、震源の深さは10キロメートルあまりと浅かったために局地的な震度が大きかった。このため、高雄市の隣にある台南市で少なくとも7つのビルが倒壊した。

 震度は雲林県で震度6、台南市で震度5を記録したとされている。本当に台南市で震度5だったなら、ふつうはマンションは倒れない。やはり手抜きだったのだろうか。

 台湾で使われている震度階は日本と同じものだ。これは戦前の植民地時代に日本式のものを導入したからだ。

 しかし厳密に言えば台湾のいまの震度階は日本のものと違う。それは、日本では1996年から震度5と震度6のそれぞれを強弱ふたつに分けて、震度0から震度7まで全体を10段階にしたためだ。台湾の震度階は、いわば「日本の昔の」震度階なのである。いま植民地でもない台湾に、新しい日本の震度階をまさか強制するわけにはいかなかったのだろう。

 世界のほかの国ではすべて12段階の国際的なスケールになっている。前にこの連載で書いたように、韓国では2001年に日本式の震度をやめ、国際的な12段階のものに変更した。台湾と同じくかつての植民地だった韓国は日本風の震度を「押しつけられた」と感じたのだろう。

 ところで、台湾でたびたび大地震を起こしているプレートの構図は琉球列島から四国・九州、そして東海地方まで続いている。同じフィリピン海プレートが同じユーラシアプレートの下に潜り込んでいるのである。恐れられている南海トラフ地震もこの構図が起こす。

 じつは阪神淡路大震災(1995年)でも手抜きが明らかになった。地震で倒壊したビルでコンクリートの柱の中から廃材や空き缶が見つかったのだ。関西には限らない。地中杭が短いマンションも大地震が来てみないと安全かどうか分からない。

 日本にとっては、この台湾の大地震は「対岸の火事」ではなくて「明日は我が身」かもしれないのである。


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