2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震(モーメントマグニチュード9.0)をルーマニア・ブカレストの精密重力計が記録していました。

モーメントマグニチュード9.0という巨大地震だと、地球の反対側でも、地震計で十分記録される。これは、ルーマニア・ブカレストのルーマニア国立アカデミー地球ダイナミック研究所の地下室にある、精密重力計(上の写真の右下)が、重力(地球の引力)の変化として記録したものだ。重力計は、地球の表面の上下の動きを測るものだから、地震計の一種、つまり上下動の地震計のひとつである。なお、震源からブカレストまでは、約8900km離れている。

グラフの縦軸は測定された重力の値。たとえば5053と5054の一目盛が1mgal(ミリガル)にあたる。この重力計はさらにその1/1000のマイクロガルまで測れる測器だから、最大振幅で約7mgalの東北地方太平洋沖地震を正確に捉えることができた。

なお、重力の加速度は1Gで、これは980gal (=980,000mgal) にあたる。この重力(地球の引力)の値1Gが、地表での普通の値だから、その100万分の7だけ、重力(地球の引力)が変化したことになる。

横軸は時間軸で分を表しているが、絶対値には意味がない。約「60」のところで、地球内部を突き抜けてきたP波が到着し、「86」のところ、つまりP波の約26分後に、地球の表面に沿って伝わってきた表面波が到着している。この地震のように、マグニチュードが大きくて震源が浅い地震だと、表面波の振幅がいちばん大きくなる。

ところで、この精密重力計は、この記録を取った直後に、故障してしまった。もし、故障していなければ、地球の反対側をまわってきた表面波をはじめ、それら二つの表面波が、さらにぐるぐる、地球を4〜5周した記録も取っていたはずだ。つまり、地球は、釣り鐘を叩いたときのように、大きな地震の後は、ぶるぶる、震えつづけるのである。

ちなみに、太陽と月の引力に引っぱられて、海洋潮汐(海の水の満ち干)だけではなくて、固い岩を含めて、地球全体が伸び縮みをくり返す「地球潮汐(ちきゅうちょうせき)」というものがある。これによって、地面は毎日30センチほど、上下している。このときの重力の変化は約20マイクロガルほどになる。つまり、上の東北地方太平洋沖地震のときの変化の1/350ほどである。

「動かざること大地のごとし」という諺は、私たち地球物理学者にとっては、まったくの間違いなのである。

(島村英紀がルーマニア国立アカデミー地球ダイナミック研究所の招待で2012年11月に同国を訪れたときに、もらった記録)

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